これ以上の喜悦はない
『涼介!』
やめてやめて…
俺の名前を呼ばないでよ、
その声で呼ばないで…
お願いだからっ、
今更、今更なんで…ー
◇
「涼介おはよ。」
「…おはよー。」
謙人に必要以上会わない為に、秀明の部屋に泊まり込んで暫く経った。
そんな今日の寝起きは最悪。
原因は彼…
奥野謙人の行動にある。
あれから謙人は、毎日ストーカー並みのしつこさで俺の前に現れた。
もう俺達の関係は終わった筈なのに、そんな事をされたら可笑しくなりそうだ‥。
だけど本当は心の中が喜悦だった。
避けて避けて避けて、謙人を無視して…。
そうすれば謙人が俺の名前を呼んで追い掛けてくれる。
そう考えてしまう俺はやっぱりまだ謙人のことが好きで、
馬鹿みたいだけど謙人のその行動が嬉しいって思ってしまって…
夢みたいな現実に少しの幸福を感じていた。
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