02
「お前進学すんの?」
学年が上がって早々の話題は、やはり進学の話が中心であった。
とうとう受験生となってしまった那智は何気なく日奈に聞いてみた。
「しないよ…。那智君は?」
「俺は親父の不動産業に関わりたいから経済学か法学専攻…。つーかしないってどうすんだよ?」
「うーん…アルバイトとか…。」
那智は呆れて一瞬声を失った。
この容姿でアルバイト…しかも堂々とフリーター宣言。
日奈の認識の甘さに苛ついて、頭を教科書で叩いた。
「馬鹿かお前は…。バイト舐めんなよ?鏡見てから言えブス。」
「…ごめんなさい。」
「よく考えろ。お前が入れる大学があるとは思わねぇけど、探せば色んな道あると思うぞ。探す前に諦めんな。」
「……そうだね。」
那智からまともな意見を言われた日奈は叩かれた頭を撫でながら頷いた。
返す言葉もないくらいしっかりしている。
「それより良いの?」
「何が。」
「私と一緒に居なくても良いんだよ。」
那智は一瞬押し黙った。
先程から気にしないようにしていた事をまんまと言われ、舌打ちが出そうになる。
それは那智と日奈が注目されていたからだった。
「自惚れんな…。人間関係面倒だからお前と居るだけだからな。」
「那智くんは…友達が少ない…。」
「っ…テメェ、少ないんじゃなくて敢えて作ってないだけだ。勘違いすんなブス。調子乗んな。」
那智は日奈を睨んで机を蹴った。
高校三年となり、日奈と那智は相変わらずクラスが同じだった。
他の幼なじみ組は、虎と新太、佐奈と凛子…という組み合わせで綺麗に別れていた。
ただ新太はあまり虎と関わりたくないようで、それぞれ別のクラスメートと一緒に居る。
那智もそうすれば良かったのだが、日奈の隣が思いの外居心地が良くて離れられなかった。
「アイツ最近どう?」
那智は相変わらず佐奈の動向が気になっていた。
長い関係だっただけに、どうしても様子が気になって仕方がない。
もう心が傷むことはないが、やはり佐奈の存在は今でも大きかった。
「元気だよ。」
「へぇ…。」
「きっと、虎君と上手くいってるんだね。」
「……。」
那智は舌打ちしたくなった。
虎や佐奈、個人としては嫌いじゃない。
ただ二人が並ぶとどうしても嫌悪感が湧き上がってきた。
虎の位置に自分が居たかもしれないという可能性が浮かび上がってくるのが原因だろうか…。
小さくシネと呟いた。
「嫉妬する?」
ハッとして日奈を見た。
そんな質問をされるとは思っておらず、那智は驚きのあまりドキドキとした。
「は?するわけねぇだろ。」
「そっか…。」
突然とんでもない事を言う日奈に嫌な気持ちが消えてなくなる。
日奈のこういう所に救われる部分が大きかった。
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