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チャイムの音と共に日奈が教室へ入ってきた。

那智はそんな日奈に興味深々と声を掛けた。


「寝坊なんて珍しいな。」

「…最近、徹夜続きだったの。」

「へぇ、とうとう勉強でも始めたか?」

「……。」


日奈はその問い掛けに躊躇して言葉に詰まる。

しかし何時までも返答を待つ姿勢の那智に、答えるしか選択肢がないのだと口を開いた。


「プレゼントを、作ってた。」

「プレゼント?」

「昨日、虎君の誕生日だったんだよ。」

「あぁ……なるほど。」


日奈が渋った理由はこれだった。

虎の名前が出た途端、あからさまに嫌そうな顔を那智はした。

どうやら佐奈の話では、那智や新太、凛子など、虎の友人は誰一人として来なかったらしい。

虎本人は口にしないものの落ち込んでいるに違いないと、この状況を作った一因である佐奈は罪悪感いっぱいにそう語った。

そして昨夜はせめて自分が側にいて皆の分を埋めるんだと、二人一緒に過ごしたらしい。

寝不足も多少はあるが、実はこんな話を朝からしていて遅刻してしまった。


「わざわざプレゼントね…マフラーでも編んだか?」

「そんな大層なものは作れないよ…。」


冷たい空気が流れたままに担任が教室へ入ってくる。

号令、朝のHRが始まった。


「それで、あいつらは?」

「私には、分からない…ごめんね。」

「あっそ。役立たず。」

「…気になるなら行けば良かったのに。」

「チッ…シネ。」


図星とばかりに那智は黙り込んだ。

いつも日奈に幼なじみの動向を聞いて、これでは未練があると言っているようなものだ。

新太とは和解したものの、クラスが違うため自然と距離が出来た。

凛子とは冷たくして以降、互いに目を合わせる事さえなくなった。

虎とはもう何ヶ月も話していない。

最後に話したのは去年起こったあの事件が最後だ。

佐奈の隣には虎が居る。

佐奈を避けるなら、自然と虎のことも避けるしかなかった。


「幼なじみって特別なんだよね、きっと。」

「だから…?」

「だったら、いつかは分かり合えるはず。今は、何も心配しなくて大丈夫。」

「何を根拠に?」


ハッキリ大丈夫だと言い張った日奈に那智は純粋な疑問を感じた。

何故そこまでハッキリ言えるのか、果たしてその言葉の根拠は何なのか。

知れるものなら教えて欲しかった。


「根拠はないよ。私の感、かな?」

「あー…真面目に聞いた俺が馬鹿だったわ…ふざけんな…。」

「でも、女の感はよく当たるって。」

「お前っ…!自分が女だって自覚あったんだな!?つーかその外見でよくもまぁそんな台詞を…やっべ…、」


沸々と笑いが込み上げてきた那智は肩を震わせて笑い出した。

口を手で押さえて笑い声を無理やり抑える。

お腹が痛くなるくらい面白かった。


「あー腹痛い…ヤベェ、マジヤベェ…。」

「そんなに可笑しかった?」

「普通に可笑しいだろ。まぁ、女の感…?参考にさせてもらうわ。」


尚も笑いが止まらない。

ツボに入った那智はニヤニヤしながらそう言った。

大変失礼な反応ではあったが、楽しそうで何よりと、日奈は内心ホッとした。




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