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「そうですよ。父さんも征志さんも気が早いなぁ。」
困ったように笑う悠を横目に虎はコッソリ溜め息を吐いた。
毎年の事ながら拷問を受けているようだ。
早くこの場を離れたい。
そして何よりもこの兄だ。
社交の場では大人しい対応だが、裏では酷い生活を送っているのを知っている。
兄の悠は昔から女好きで、平気で何股もかけるような人間だった。
セフレだと理解した上で性行為を行う那智や佐奈とは違い、悠の場合はそれを隠して付き合っていた。
大変質の悪いその行動は大学へ上がってからもっと酷くなり、そして現在に至る。
そんな人間が良くもまぁ出来た人間だと評されたものだと内心悪態を吐いた。
あれから佐奈の視線に堪えれなくなった悠は、仕方がないと声をかけた。
「佐奈ちゃん。もしかして場酔いしちゃったかな?少し顔色が…」
「そうなのか佐奈?」
父に聞かれた佐奈は「少しだけ…」と困ったように笑った。
「少し部屋を出ましょうか。父さん、後の挨拶周りは虎とお願いします。」
悠は佐奈をエスコートし、人にぶつからないように気を使いながら部屋を出た。
「顔色…悪かったですか?」
「…良いや。逆に良かったぐらいだな。ずっと真っ赤だった。」
悠は苦笑いで自身に宛がわれている部屋へ向かった。
とりあえず話だけでも聞こう。
「佐奈ちゃんは虎と付き合ってるのかな?」
「え?いえ、虎とはただの幼なじみで…でも、虎は私の事好きだったみたい、今は知らないけど、」
佐奈は困ったように笑った。
「そう、それなら虎に付いて来て貰えば良かったかな。気がつかなくてごめん。」
「いえ…むしろ私は悠さんとずっとお話したかったから…今こうして話せて嬉しい。」
「積極的だね。」
部屋へ着くとそう言って悠は佐奈を抱き締めた。
佐奈は驚いて言葉も出なくなる。
そんな佐奈を少し引き離し、悠は顔を覗き込んだ。
「ずっと俺のこと誘ってただろ?やらしい子だな。」
「っ……、」
佐奈は羞恥心で頬を赤く染め、恥ずかしそうに俯いた。
ドキドキと心臓の音が止まらない。
「俺のこと好き?」
綺麗に巻かれた茶色い髪を弄りながら耳元で低く囁けば「好きです」と言う可愛い声。
「俺とエッチしたい?」
「っ…悠さんさえ良ければ、」
「俺じゃなくて、佐奈ちゃんがちゃんと誘って?」
「…したい、です。」
「なにを、」
誘導するように悠は優しく問い掛ける。
吐息混じりの言葉で甘く攻められ、佐奈は今までになく興奮した。
「悠さんと、エッチしたい。」
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