04

期末試験の答案用紙が帰ってくる日。

日奈は平均を大きく下回る点数の答案用紙を綺麗に折り畳みファイルに直そうとしていた。

しかし入れようとした所で、自分の答案用紙を取りに前へ出ていた那智に奪い取られてしまった。


「相変わらず馬鹿だな。馬鹿でブスって可哀想だわ。」


鼻で笑うと紙を手離して席に戻っていった。

ヒラヒラと床に落ちた用紙を拾おうと屈めば、今度は別の男子に踏まれて尚且つ場所を移動させられた。

ズルッと嫌な音と共に日奈の後方へ紙が移動する。

日奈は仕方がなく中腰で紙を取りに行くが、その不気味さ故に女子からは怖いと言う声、男子からはキモイと言う声が瞬時に上がる。


「ごめんなさい…。」


ボソリと反射的に謝る。

このような扱いに慣れてしまった日奈はすぐさま席に着くと、先程まではなかった足跡を優しい手付きで払い落とし今度こそちゃんとファイルに直した。






「佐奈は何点だった?」

「84、ちょっと低いかな?」

「凄い!充分じゃん!」

「凛子はどうだった?」

「えっとぉ…平均点…で勘弁して下さい!」


クラスの中で一際目立つ生徒は何も日奈だけではなかった。

悪目立ちしている日奈とは対照的に、アイドルになれそうなほど可愛い佐奈。

そして抜群のプロポーションを持つモデル体系の上村凛子の存在だった。

凛子は既にモデルとして仕事をしており、ティーン向け雑誌の専属モデルをしている。

高校からの入学の為、余計に佐奈とのコンビで目立っていた。

佐奈は高校に上がって更に垢抜け、凛子もモデルとして常に努力をしている。

そんな二人を周囲がほっておく訳がなく、居るだけで注目の的。

学年問わず人気のある不思議な二人だった。


「凛子やるじゃん。化学苦手って言ってたのにな。」

「みんなに教えて貰ったんだから頑張るしかないでしょ?すっごい頑張った!」


那智の褒め言葉に続いて聞こえてきた凛子の発言から、先日佐奈の部屋に居た女子が凛子だと分かる。

佐奈と凛子、そして那智を筆頭にした三人組は今やクラスの中心だった。


「誰かとは大違いだな。凛子みたいに努力する奴ってマジで尊敬する。」

「褒めても何も出ないよー。てか誰かって誰?」




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