02

「ブスは学校くんな。目障りだわ。目が腐る。」


そう嫌悪感たっぷりに言ったのはクラスメートの男子、藍原那智だった。

赤茶色の髪を遊ばせた彼は周囲にキラキラとした今時の生徒を引き連れ帰る所だった。


「きっしょ。」


軽く机を蹴るが、敵意を向けられた本人は無反応でやり過ごしていた。


「那智、こいつが気持ち悪いのなんて今更だろ。ほっといて帰ろうぜ。」


そう言って嫌な顔をする彼、紅林虎もまた美形と呼ばれる類の人物であった。


「そうだな。おいブス、俺が話し掛けてやったんだから有り難く思えよ。」

「フッ‥笑わせんなよ。」


那智の物言いに虎はつい吹き出してしまう。

そんな彼らのやり取りに同じく笑みを浮かべてしまったもう一人の生徒、八尋新太は事の発端である彼女に一瞬視線を向けると見下したようにニヤリと広角をあげた。


『相変わらず価値がない。』


何時でも損得を一番に重視している新太は、那智達のように声を掛ける事はせず目の前の二人に声をかけた。


「俺には何も見えないけど。幽霊でも見たか?」

「お前が一番ひでぇな!」

「那智笑い過ぎ。ほら、とっとと帰んぞ。」


ギャハハと馬鹿笑いする那智につられ二人も笑いながら教室を出た。

その後、この三人と同じような扱いを他の生徒もし、一通り罵声を浴びた彼女は一人教室の掃除を始めた。






彼女の名は芳野日奈と言った。

現在高校一年生でありながら友達は一人も居らず、いつも一人の暗い少女だった。

それもそのはず。

日奈の通う学校は小中高のエスカレーター式で、環境が変われど日奈の境遇は変わらなかった。

何より今の状況を作っている一番の原因は日奈自身にあり、それを本人も分かっていた。

日奈は一度も染めた事のない真っ黒な髪を腰の辺りまでだらしなく伸ばし、一年中顔を隠して過ごしている。

前髪も最早前髪と呼べるレベルではなく、更に身長が148pしかない日奈の長髪は有り得ないほど不気味に見え、異端な存在感があった。

これでは苛めて下さいと言っているようなもので、気持ち悪がって近付かない者が半分、遊び程度に近付く者が半分と、どうしても目に付く存在だった。

高校から入学した者は日奈の異端振りに初めこそ驚いていたが、入学から3ヶ月が経った今では幼なじみ組と同じような反応で日奈の様子を伺っていた。




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あきゅろす。
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