03
「よぉ。」
「お久しぶりです…。」
「ん。」
11月の上旬、那智の気紛れで卒業式振りに二人は会っていた。
実は幾度と連絡は取っていたが、そのほとんどで日奈が那智の機嫌を損ねる返信をしていたため、今まで会うには至らなかったのだ。
『最近どう?』
『ニートです。』
『シネ。』
このたった三通のやり取りを繰り返してきた。
そして先日、ようやく日奈が『働いています。』と返信したことがキッカケで会うことが決まった。
「……。」
「……。」
那智にしろ日奈にしろ今更何を話せば良いのかときごちなくなる。
とりあえず那智は学生時代に日奈と一度来たことのあるパスタ屋に入ることにした。
「元気か。」
「そうですね、普通です。」
「髪の毛はまぁ、マシになってるな。…つーか今から飯食うんだからマスク外せよ。」
「嫌です。」
即答した日奈に那智は笑顔を作ってわざと拳を震わせてみせる。
すると日奈は小さく謝って下にマスクをズラした。
「前髪も相変わらずウザイな。なんでそんなナリで飲食店採用されたわけ?意味分かんねぇわ。」
「…私の心意義、かな?」
「黙れシネ。」
「……。」
「……マジで黙んなよ。」
疲れたように溜め息を吐き、相変わらずマイペースな日奈を改めて確認した。
髪の毛の長さや毛先を見る限りメンテナンスは行き届いているようだが、相変わらず目元は隠れている。
服装も相変わらず白を好んでいるようで、その上マスクまでプラスされていては、変わっているのか変わっていないのか判別しようのない印象だった。
「那智君は爽やかに…」
「あ?」
「爽やかに…」
「黙れブス。」
那智は日奈に向かって中指を立てた。
そんな現在の那智の風貌は、赤かった髪が黒くなり、髪型もスッキリとしていた。
身なりもお洒落で清潔感のある服装で固められ、高校時代に遊び呆けていた印象をまるで感じさせない仕上がりとなっている。
現在の那智は誰から見ても好青年そのものだった。
「次言ったらコロス。」
「うん…分かった。」
「お前…ムカつくな。」
少しニヤケて返事をした日奈に、那智は再び拳を震わせた。
「学校はどうですか。」
「まぁ…、楽しいな。」
「そっか、良かった…。」
二人はご飯を食べつつ近況報告をした。
特に進学をした那智は日奈よりも話題が豊富で、会話は途切れなかった。
「友達は出来たの?」
「まぁまぁ。軽音サークル入ったし。」
「…ケイオンって何?」
「あ?知らねーの?音楽サークルのことだよ。」
「へぇ…凄い。那智君って楽器弾けたんだ…。」
那智の意外な趣味に日奈は驚いたような声を出したが、那智は暫くの沈黙の後、気まずそうに答えた。
「俺…、ずっと幽霊部員…。」
「あー…。」
その一言で察した日奈は、話題を変えることにした。
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