山田行道と優一
二人は隣に座っていた。
ガタガタガタ。
ジェットコースターが天へ登る。
ガタガタガタ。
山田は優一に視線をやった。
怖いのだろう、レバーをギュッと握り締め、目もキツく瞑っていた。
先程の発言通り『頑張らなければ乗れない』のが目に見えて分かる。
ガタガタガタ。
山田はフッと笑って優一の手を無理矢理剥がすと、その手を強く握った。
「ぇ…」
驚いたのだろう、優一が素早く目を開けた。
その瞬間…
『キャャァァアアア!!!』
落ちた。
「いゃっふー!!!」
乗員達の叫び声に混ざり、山田は気持ち良いとばかりに雄叫びを上げた。
その時も握られた手は離れず、むしろ握力が増していく。
何だか楽しくなってきた山田は落ちながら盛大に笑った。
「あー、ヤッベー、楽しぃいい!!!」
数分後、カタカタと緩やかな速度となる。
テンションの上がった山田は楽しげに笑っていた。
「優一!だいじょうぶ‥」
─ じゃないみたいだな。
山田は苦笑いを浮かべた。
優一が泣いていたのだ。
「優一…、目から涙出てるぞ…」
「…ウルサい。生理的なもので怖かったからじゃない。」
「分かった分かった。涙じゃなくて生理的なものな。…なんかゴメン。」
山田は素直に謝る。
レバーが上がって降りてもなお、優一の機嫌は悪かった。
本人は否定しているが明らかに怖かったのだろう。
そうに違いない、確信を持って言える。
ムスッと無愛想な顔をする優一を見て真剣に思った。
「悪かったな。」
「…別に。」
赤くなった目が白い肌に栄える。
ここへきて優一の美男子具合を改めて思い知らされた。
「拗ねんなよ。」
「拗ねてない。…別に、ちょっとは楽しかったし。」
ムスッと唇を咎めながらも赤い目が山田を見つめて少し笑う。
何故だろう。
不意打ちの所為か、ドキッと山田の心臓が跳ねた。
これは可笑しいと山田は優一から目を逸らした。
「泣き虫の癖に。」
「なんだよ…第一、お前が悪いんだからな。」
「はぁ?人の所為にすんな。」
「だって…いきなり手繋ぐし、かと思えば落ちるし…色んな意味で死ぬかと思った。」
再びムスッとしたかと思えば、優一はそう言って山田にわざと肩をぶつけてきた。
"恭子"がよくする照れ隠しの一つだ。
照れると肩で肩をぶつけてくる。
何故そうするのかは知らないが、この拗ねた感じも堪らなく好きだった。
「今まで何回も手繋いだじゃねぇか。まだ緊張すんの?」
「…るさい。慣れないんだよ、そんなの…」
照れを隠すように山田の居ない方向へ顔を逸らす。
優一の耳が赤く染まっていた。
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