山田行道の困惑
「ねぇ、貴方は、」
「あ゙ぁ?」
「…優一のどこを好きになったの?」
恭子に見当違いな質問をされる。
山田はそれよりも優一が自分と何故交際をしていたのか、その理由を知りたかった。
「好きじゃねぇよ、あんな奴、」
「…でも、優一が好きなんでしょ。もうあれから3ヶ月経ってる。1ヶ月も保たないって言ってた貴方が。」
「気紛れだよ気紛れ。それより何でアイツは俺と付き合ってたわけ。それが一番知りてぇの。」
苛立ちを表に出して山田は恭子を睨み付ける。
恭子は顔を上げ、山田の目を見つめた。
その真っ直ぐな目は、しっかりとした意志を持っている。
山田はその目を同じく強い眼差しで見つめ返した。
「優一が。貴方を好きだからよ。」
「なに、それ。」
「…確かに優一は私のフリをしていた。でも弟はそこまで演じれるほど器用じゃないの。少し誤魔化すのと長期間付き合うのでは話が別だもの。」
山田は心臓を鷲掴みにされたような心境だった。
─ 優一が自分を好き?
ここへきて、まるで考えていなかった理由を恭子が零したのだ。
山田は信じられなかった。
次から次へと驚かされる。
容量は最早いっぱいで自身の髪の毛をグシャグシャにかきむしった。
「本当なの、これだけは信じて!貴方達が二人で居る所を見たことはないけど…貴方の前に居た優一はいつでも優一だった。そうでしょ?」
「…だから、何だよ。」
「優一、最近凄く変わった。感情が表に出やすくなったし、自信もついてきたみたいで…。私も大学生になって恋人が出来たから凄い分かるの。息抜きの仕方が分かってね、生き甲斐も出来たの。だから、貴方には本当に感謝しているんです。」
恋人とはきっと、先ほど居た連れの男のことだろう。
不思議なことに本物の恭子に恋人が居た事を知っても山田は対して何とも思わなかった。
今となって山田は恭子か優一のどちらに惚れたのか分からなくなっていた。
─ もし恋人が居たのが優一だったなら、嫉妬して傷付いていたのだろうか。
考えてみるが分からない。
混乱した頭では何の結論も出なかった。
「だから少しでも可能性があるなら…優一とのことを真剣に考えて下さい。お願いします。」
頭を下げた恭子の声は凛としていて彼女の強かさが垣間見える。
どこか不安げで守りたくなるような"恭子"との違いを認めざる終えなかった。
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