22枚目
「じゃあ俺も帰る。」
「えー?ざわさんまで帰ることないじゃん。」
「…別に良いだろ。」
僕が立ち上がると吉沢君も立ち上がった。
それを平村君が引き留める。
「あ…じゃあ帰ります。皆お疲れさま。」
「俺も。お疲れ。」
逃げるように言った僕の声に続いて吉沢君が言った。
な、なんで?
一緒のタイミングで帰るなんて…嬉しいけど嫌だ、矛盾してる。
「金井。」
「……何?」
「なんつーか…俺らウルサくてごめんな?」
「そんな事ないよ…むしろ僕の方がテンション低くてごめんね…。」
吉沢君と肩を並べての帰宅。
2人きりになるのは始めてでドキドキした。
「いや、謝ることじゃねぇだろ。そんな事思ってないし。」
「そっか…。」
「あー…なんつーか、金井とこうやって話すの始めてだな。」
「…そうだね。」
「いや、まぁ俺は金井みたいに静かな奴、割と好きだぞ。ていうか好きだ。ていうか金井さえ良ければもっと話してみたい…てか話してぇな、うん。」
「……、」
一気に心臓が高鳴った。
驚きのあまり声も出なくて、今までにないくらい緊張した。
今、結構凄いことを言われた気がする。
こんなに暗い僕を好きだって言ったよね?
それも二回も。
「あー…やべ。なんか俺テンパってて…いきなりだったよな。マジごめん…。」
ど、どうしよう…!
僕は歩きながら俯いてしまった。
緊張の余り、何て返せば良いのか分からなくなっていた。
「いやでも本当、金井さえ良かったら…ー」
「ざわさーん!!!」
バタバタと走る足音、吉沢君を呼ぶ大きな声。
その主は平村君だった。
「よっと!」
「っ…!」
平村君は勢い良く吉沢君の背中にジャンプする。
自然とおんぶの態勢になり、そのまま歩みを進めた。
「平村…てめぇ…」
「あれー?ざわさんご機嫌ななめ〜?よしよ〜し。どーどー。」
「…俺は馬か。降りろ。」
「とか言いつつ支えてくれるんだもんね。ざわさん優しー。」
ギューと言いながら平村君が吉沢君を抱き締める。
…と言うか首締まってない?
苦しそう…。
「ゲホッ…く、るしいわ!」
「てへぺろ〜。」
「ハハ…。」
愛想笑い程度に笑ってやり過ごす。
急に僕の居場所がなくなって、やっぱりな…と自己嫌悪を苛まれた。
僕は一人。
誰と居たって誰も僕を選ばない。
「金井…ごめんな。急にウルサいのが来て。」
「そんなこと…」
「ひーどーいー。俺ウルサくないし〜。」
「どこがだよ。つーかいい加減降りろ。」
「またギューってするよ?」
「……。」
ほらね。
僕に話す隙なんてない。
だったら大人しくしてようとキツく口を閉ざした。
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