09枚目

嫌に疲れた。

振り返りたくもない。

それくらい平村君の行動、発言は異常だった。


「関わりたくない…。」


そうだ。

平村君の言う通り吉沢君とはもう関わらなければ良い…。

出来る事なら平村君と関わりたくないから…。


「とりあえず…、見るのは、やめて……、」


変に関わるよりマシだろうと思った。

以前のような恐怖心より、逃げる方法ばかり考えてしまう。

怖い訳じゃない。

とにかく関わりたくなかった。

出来れば声も聞きたくない。

こんなに意味の分からない不安を、僕は始めて感じた。








次の日から僕は吉沢君達を意識しないように意識した。

彼等が騒いでいても視線を向けない。

嫌な感情が蘇ったら本を開く。

北原君が変に感づいたら風邪だなんて適当に誤魔化して…。

そうすると、驚くほど平和に過ごせた。






しかし平穏を脅かす悪魔は突然やってくる。


「なぁなぁ。」

「お?」

「なに?」

「また今回も勉強会する事になってさー。お前らもくるか?てか来るよな?」


小西君の言葉に一瞬固まる。

今回もってことは…。


「特に金井!頼む!」

「オイ!俺は!」

「やーボクチンとしては久々に平村と金井のツーショットを拝みたいと言いますかぁー。」

「…下心丸出しだな、気持ち悪い。」

「目の保養だろ!」


以前からの疑問。

小西君達は、何故か僕と平村君を一緒にしたがる。

それが理解出来ず、今は何だか嫌な気分だった。


「なんで?」

「え?」

「何で、僕と平村君をいつもセットで考えてるの?」


僕は何とか笑顔を作って聞いた。


「えっいやぁ…まず金井は綺麗で癒し系だろ?で、平村はイケメンだけど天然で甘えたって言うギャップ萌っつーかぁ、弟にしたいタイプっつーかぁ…天使やな。」

「なぜ関西弁や。」

「お前もや。」


関西弁の使い方が違う…と言うツッコミは置いといてひとまず考える。

つまり…僕以外の人にとって平村君は甘えてくる弟みたいな存在だと。


「北原君はどう思う?」

「俺?そうだな…金井は綺麗で癒し系で優しくて一緒に居ると落ち着くな。」

「…平村君は?」

「アイツは…騒がしいけど良い奴って感じ。頭も良いし空気も読めるし。たまに天然入ってるけど平村だから仕方がねーかーみたいな。」

「そう…。」


僕の感じてる印象と違い過ぎて混乱する。

でも‥あれが本当の平村君だよね?

僕は自然と数日前の決意を忘れて、反射的に平村君達に視線を向けてしまった。


「っ…、」


バチリ。

吉沢君と目が合った。


『しまった!』


急いで逸らせば今度は平村君が振り向いて反射的に目が合った。

そして次の瞬間には久々に見る笑顔を向けられ、その笑顔に悪寒が走る。

僕は小西君に視線を戻した。


「僕は勉強会は良いかな。試験まで後2日しかないし、一人で追い込みたいんだ。せっかく誘ってくれたのにごめんね。」

「じゃあ俺もパス。」

「えー!えー…うわー…残念…まぁ、お互い頑張りましょー。」


しょぼんと肩を落とす小西君には申し訳ないけど僕の平穏がかかってるんだ。

ごめんなさい。


「良かったのかー?奴らと仲良くするチャンス潰しちゃって。」

「…良いんだ。気持ちは嬉しいけど大人数が苦手だって分かったから…無理に関わる必要もないかなって。」

「そうかぁ…。まぁ無理してないなら全然良いんだ。それに俺も大人数はそこまで好きじゃないし。」

「そうだよね…。」


北原君にも申し訳ないな。

でも…こんな僕でも一緒に居て落ち着くって言ってくれたんだ。

北原君を失いたくない。

はじめて出来た大切な友達だから…。




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