23枚目

「金井くん。」

「な、なに?」


黙っていようと思った矢先、平村君に話しかけられた。

一体何を言われるんだろう‥。


「金井くんってさー。俺のこと嫌い?」

「えっ……。」


嫌な緊張感に襲われる。

嫌いなのは平村君だよね?

だから僕は…ー






「嫌いじゃないよ…。」

「そっかー。じゃあこれからも俺と仲良くしてね〜?」


嫌じゃない、苦手なだけ。

チラリ。

吉沢君におぶられた平村君に目をやるとバッチリ目が合った。


「あ。やっぱり嫌だった〜?」

「っ…嫌じゃない。」

「良かったー。俺も金井君、スキだよー?」

「ぁ…。」


ザワッと鳥肌が立つ。

急いで視線を逸らした。

それでも平村君からの視線が消えなくて、鞄を強く握る。


「お前…嫌いじゃないをどう捉えたら好きに変換出来るんだ。頭わいてんのか。」

「えー?嫌いの反対は好きでしょー。」


吉沢君の呆れ声に平村君の笑い声。

いつも通りの光景に僕へ突き刺さるいつも通りじゃない視線。


「今日はお疲れ様。じゃあね。」

「あ、金井…」

「金井君お疲れ様〜!」


部屋が見えてきた所で強制的に立ち去った。

自然と早足になるのは仕方がない。





平村君がただただ怖かった。

僕と仲良くしたいと言った彼の目は、全く笑ってなどいなかったんだから。

そしてスキだと告げた時に一瞬浮かべた微笑みは歪んで見えて…。


何を考えているのか全く分からなかった。


冷たい表情で僕を突き放して、優しい言葉で近付いてくる事に何か深い意味はあるのか…ー。







── バタンッ。


部屋に入ってすぐ、ベッドに突っ伏した。


これからも仲良く?


それは僕が望んでいたことだ。

友達を作って、一緒に笑って、求めて、求められて…。

こんな僕でもここに居て良いんだと思える居場所が欲しかった。

そんな人と沢山出会いたいと思っていた。


なのに身体全身が彼を拒んでいる。


嫌だ。

平村君が怖い。

平村君と関わりたくない。

平村君は吉沢君の友達で…一番仲の良い人なのに。


「どうしよ…。」


僕は頭を抱えた。

こんな嫌な感情は忘れてしまいたい。

誰か、助けて欲しい。


けれど、

けれど、

けれど…



こんなこと。





誰にも言えない。




あきゅろす。
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