05枚目

次の年になって僕は高校三年生になった。

当たり前だけど皆受験生で、苛めなんて幼稚な事をする人は居る筈がなかった。


「卒業か…」


早い事にとうとう夏休みも終わってしまい、後は長い二学期が始まる。

二学期は行事が多いからクラス全体で動く事が多い。

だから僕は二学期が苦手だった。


「金井、いくぞ。」

「うん。」


でも今年になって北原君という新しい友達が出来た。

だから二学期に対する憂鬱は昔ほどじゃなかった。





「では次に卒業アルバム委員を決めます。」


新学期が始まって最初のホームルーム。

先生のハキハキした声が教室に響いた。


「やりたい人いますか。」


先生の声にクラスがざわつく。

関係ないというような態度の子も居れば、お前がやれよ‥なんて言い合ってる人も居る。

だけど大半は前者ばかりだった。


「ねぇ北原君、卒業アルバム委員って何だろ?」

「んー‥卒アル作んの手伝うんじゃね?……もしかして、金井やりたいのか?」

「いやいや、僕は無理だよ…」


絶対に無理だと心底苦笑いを浮かべる。

昔から黒と赤で何の面白みもないノート作りをしてる僕がアルバム制作なんて出来っこない。

なにより目立つような仕事は進んで引き受けたくなかった。


「先生ー吉沢がやりたいってー。」


誰でも良いから居ないかーと気だるげな先生の声に、ようやく反応を示したのは明るい声だった。


「は?言ってねぇよ。」

「えー?とぼけんなってー、俺にはちゃ〜んと聞こえたからぁ〜。吉沢の心の声が!」


彼は吉沢君の前席に座っている平村君で、2人はとても仲が良いらしい。

こんな風にこのクラスでは、この2人の周辺がいつも騒がしかった。


「そうかそうか、吉沢がやってくれたら助かるな。そんなに大した仕事でもないから、吉沢さえ良ければ引き受けて欲しいんだが。」

「……。」


この後、渋々といった感じで引き受けた吉沢君に、よく言った!とクラスは拍手喝采となった。

僕も何となく拍手に混じってみたりして。

こうして新学期のホームルームは終わった。




あきゅろす。
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