14枚目
(side:吉沢)

今朝のプチ騒動も開会式という無駄に長いにプログラムにより沈着していた。

いや、平村が金井に抱き付いた時は本当に思わず足が出たな。

あれは条件反射だった。

以前の"金井が手島を好きだなんたら〜"の時もそうだが、平村は俺が苛つくポイントを度々突いてくる。

これで天然なんだから質が悪いな。

たまにワザとなんじゃねーの?なんて思う時もあるが…所詮八つ当たりでしかない。

それしても暑いな。

平村や小西への些細な怒りなんて、夏の暑さに比べれば何てことなかった。

ホントあっつい、死ぬ。





「次100mかー。」


隣で平村が呟いた。

俺の目の前には北原、そして本来なら空席であるはずの金井の席には犀川が座っている。

運動部の小西も運動出来る枠として100mリレーに駆り出されているので今はおらず、俺達運動出来ない枠はテントの下でダラダラと過ごしていた。

それにしても…

あのひ弱そうな金井が100mどころか200mにまで駆り出されていると言うから驚きだ。

俺はつくづく金井の事を何も知らないのだと落ち込んでしまうが、その反面新たな一面が知れて嬉しかった。

そんな事を考えているうちにピストルの音がグラウンドに鳴り響く。

選手が一斉に走り出した。


「行けー!やれー!」

「…クソ暑い。」


隣の茶髪は高いテンションで応援し、そのまた隣の金髪野郎は暑いとプログラムで風を作っていた。

応援しろや金髪。


「平村、今何位?」

「四位!俺ら負ける!」

「マジで!?ヤバいだろ!」


ザッと目で追えば、うちのクラスは最下位だった。

これは絶望的だ、もう無理だろ。


「お、抜いた抜いた抜いた!!!吉沢見て!アイツ抜いた!」

「分かってる見てるって!叩くな!」

「手島も見た見た!?今抜いた!!」


興奮したように平村が俺と手島をバンバン叩く。

グラウンドは接戦で、うちのクラスは最下位から何とか巻き返し三位となっていた。

そして次にバトンが渡され、そのまま三位をキープ。

目の前の繰り広げられる熱戦に「二位も抜かせ!」とクラス中で声が上がった。

そしてあっという間にリレーも終盤に。

続いて…注目の金井にバトンが渡された。


「お、お、おぉぉぉお!!!!はぇーーー!!!!!」

「抜いた!?」


平村が叫び、俺は前のめりに半分立ち上がる。


「金井やべぇ!!!!!」


目の前で大人しく見ていた北原もテンションが上がったらしく急に声を上げた。

あの金井が二位を追い越し、どんどん一位の座へ迫っていく。

俺達三組はまさかの追い上げに立ち上がり全力で応援していた。

そして一位にもう少しで追い付く…という所でアンカーにバトンタッチ。

後はうちのクラスのアンカーと一位の真剣勝負で、盛り上がりも最高潮を見せた。


『三組、最下位から巻き返して一位の二組と並びました。さぁもうすぐゴールです。一位はどちらか、おっと一位は…一位は…一位を勝ち取ったのは三組!数秒差で二組がゴール!続いて四組のゴール!ラストは一組です!』


うぉぉお!!!!三組から雄叫びが上がった。

最下位からの逆転でうちのクラスが勝った。




あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!