13枚目

「完成〜…お、おぉ!似合う似合う!」

「でかした小西!」

「だろ?俺マジ天才!」

されるがままの僕を見て、小西君と北原君がニヤニヤしてきた。

それはもう満面の笑み。

嬉しそうで何よりです。


「でも小西。何でピン持ってんの?」


言われてみれば…。

確かに髪が短い小西君からピンが出てきたのは不自然だ。

僕も気になる。


「今朝思い付いたんだ!金井の為に友達から借りてきた!」


と言って小西君はグッと親指を突き出してきた。

ナイスアイディア!とそれはそれは良い笑顔を向けられる。

つまり‥僕の為にわざわざ持ってきてくれたってこと?


「そんな…小西君ありがと!」

「良いってことよ!」


僕は嬉しくなってかなりテンションが上がってしまった。

今日は良い事尽くしかもしれない。

この調子でリレーも良い成績を残せたら良いけど。


「金井君、俺にも見せて〜。」

「ッ!」


突然。

後ろからガッと抱き締められた。

それに驚いた瞬間、今度は近くでスパンと良い音。

…と、ここで状況を理解した。

恐らく手島君が平村君を攻撃したに違いない。

絶対そうだ、だって手島君だもの。


「イッ…!!」

「オイコラ変態、人に迷惑かけんな。」

「い、痛い…ニ人共ひどい…」


やっぱり、と思った時には首に回された手がなくなっていて…そして疑問。

手島君が頭を叩いたのは分かったけど、どうやら平村君曰わく"二人"に攻撃を受けたらしい。

僕は謎に思って振り向いた。

真後ろには足と頭を抑えた平村君。


「ザワさんまで蹴る事ないっしょ〜、」

「ザワさん言うな。」

「……。」

「…調子乗るからだろ?」


平村君が吉沢君を恨めしげに睨んでいる。

それが何だか可哀想に見えた。


「あの…僕嫌じゃなかったよ?だから落ち着いて。」

「そうそう!天使達の包容を邪魔するとはお前ら鬼だな!」

「誰が天使だ。コイツが天使に見えるお前は相当な馬鹿だ小西。」

「はぁ!?だからって暴力に走るのはどうかと思うけどな!」

「知らねぇよ。自業自得だっての。」

「喧嘩は辞めようよ…」


一触即発。

口喧嘩を始めた吉沢君と小西君を止めに入ったものの…険悪な雰囲気はおさまらない。

何でこうなったんだろう…

平村君を見ればいつもの笑顔は消えて恐いくらい無表情。

手島君は関係ないとばかりに足を組んで平然な顔。

吉沢君はすこぶる機嫌が悪い。

ヤだなぁ…僕が所為かな…。


「オイオイ、今から本番なのに空気悪くすんなって…。あ…金井は悪くねぇからな?気にすんなよ?」

「北原君…、」

「そうだぞ。何でこうなったのかは知らんが今から開会式だ。さっさと並べ。」


いつの間に…犀川君が険しい顔付きで横に立って居た。

ハッとして前を見れば皆ゴチャゴチャと整列し始めている。

揉めている間に号令があったのを聞き逃していたようだ。


「さぁお前ら立て。そしてテントから出ろ。」


犀川君はビシッとテントの外を指で差した。

少し怖い、ゴメンナサイ。

あまりの威圧感に僕らは一斉に前へ出た。

テントの外は直射日光が当たって暑い。

この天気だと犀川君が厳しくなるのも分かる気がして僕は整列しながらもう一度心の中で謝った。

ゴメンナサイ。




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