12枚目

「おぉぉ!!!」


小西君が叫ぶ。

その反応に僕は自然と吹き出すように笑った。


「スゲェスゲェスゲェ!これ勝ったな!マジきたコレ!!」


本日は体育祭本番です。

例の旗も無事完成してテントの上に掲げられていた。

完成品を見たクラスメートの反応は小西君と同じで、何かを叫んだ後にこれなら勝てると喜んでくれた。


「達成感だな。」

「だね。」


テントの下、北原君とクラスメートの反応を伺って微笑む。

手島君あっての応援旗だけど、凄く誇らしい気分になってニヤケが止まらなかった。


「二人共お疲れ〜、あれマジスゲェな!朝から良いもん見たわー。」

「だろ?これぞ手島クォリティー。」

「手島すげー。」


小西君が満面の笑みで近付いてきて目の前の席に座った。

ここでも手島君の評価は上々で自分の事のように益々誇らしい気分になった。


「そう言えば二人は何に出るんだっけ?」

「俺は障害物と二人三脚。」

「僕も二人三脚、あとは100mと200mだよ。」

「えぇ!?金井いつのま‥」

「え!?金井君いつの間にリレー出る事になったの〜!」


小西君の台詞をわざとらしく遮ったのは平村君だった。

背後からの声に驚いて振り向くと、平村君を真ん中に、吉沢君、手島君の三人が座っていた。

いつの間に…それは僕の台詞かもしれない。

驚いた。


「おはよう…」


驚きを隠すようにとりあえず挨拶をすれば口々におはようと返してくれる。

その時、小西君の声が背後から聞こえてきた。


「会話泥棒…でも平村だから許す。」


それを聞いた北原君が「許すんだ」なんて返したりして…そっちはそっちで会話が進む。







「金井君足速いの〜?」

「うーん…どうだろうね?」

「またまたぁー、濁しちゃってー。」


楽しそうに笑われた。

体育委員情報ではかなり速い方らしいけど…一応謙遜しておく。

肯定しておいて負けたら合わせる顔がないから保険は必要かなって。


「金井君頑張って。俺らベンチで応援してるから〜。」

「ありがと。平村君達も頑張ってね。」


確か…平村君達三人は北原君と同じ障害物リレーだったはず。

意外にもこの四人は運動をしないらしくて、一番楽な障害物に進んで立候補していた。

僕が言うのも何だけど、人は見た目に寄らないな。


「あ、そうだ!金井!」

「何?」


小西君に話し掛けられて姿勢を前に戻す。

すると小西君がちょっと…と手招きをしてきた。

僕は少しだけ前屈みになる。


「前髪邪魔だろ?だから…」


前髪を触られ、それを上げてピンで留められた。

伸びっぱなしだった前髪が消えた事により視界がクリアになった。




あきゅろす。
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