04枚目

高等部へ上がると同時に虐めは無くなった。

代わりに僕は空気となる。

ここに存在しないのだと、僕は空気になった。

いっそのこと本当に空気に慣れたならと願ってみて。

こんな何気ない願いさえ聞いてくれる相手は居なかった。






やがて高校二年生になり、クラス発表の日。

朝早くから廊下にクラス替えの表が張り出された。

自分の名前と番号を確認。

意外に早く見つかって、こんな些細な楽しみでさえ短く終わるのかと段落した。

次に"吉沢"の文字を探す。

無意識を装い、結局意識している。

捨てようとした恋心は一体何処へいったのか。

問い掛けてみても分からない。

…なんて分からないフリでしかなくて、本当は答えを知っている。

何故ならずっとここにあるのだから。



『好きじゃない』と思い続けていたのに、彼を一目見るだけで心臓が高鳴った。

ほどよく着崩している制服が凄く似合っていた。

しっかり成長した男らしい姿が格好いいと思った。

忘れたフリをした恋心はやっぱりずっと“ここ”にあったんだ。

誰かがそんな僕を馬鹿で愚かだと言ったとしても、今となっては遠い存在だからこそ、こうやって密かに想いを寄せることが出来るんだ。

こんな僕はやっぱり可笑しいのかな?




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