06枚目

「北原どうだ。」

「ヤベェぞ手島、完成見えてきた。」


北原君が一人、机の上に立って言った。

教室の床に布を広げているので度々こうやって上からの確認をしている。

あ、勿論靴は脱いでるよ。


「そのヤバイは良い意味か。」

「もちろん。」


良かった。

完成間近にして悪い意味でのヤバイが出たら流石に倒れそうだ。

こんなに頑張ったんだから早く完成させて一息入れたい。


「手島クォリティーに圧巻だわ。なぁ金井、俺らの目に狂いはなかった。」

「そうだね。良い人材に恵まれて本当に良かったよ。」


体育祭まで残り僅か…という所で旗制作が着々と進む。

僕には芸術的センスの欠片もないけど、体育の授業中も進んで制作に参加していたので達成感が凄くあった。


「手島、これ完成したら打ち上げな。」

「さっすがザワちーん!平村勿論参加しまーす!」

「誰がざわちんだ。お前はくんな。」

「ザワちん反抗期なの…?てじー慰めて…。」

「キモい。」


手島君は相変わらず容赦ない言葉を言い放つ。

気のせいだろうか。

平村君の心にチクリどころかグサリと何かが刺さる音が聞こえた。


「えー、ざわちんもてじーも怖いぃ、さっちゃん慰めて!」

「……手島、あそこ塗り残しではないか?」

「あ、マジ?」


今日の作業は犀川君も一緒。

クラス委員というはイベント前の会議以外、基本暇らしいので時間がある時はこうやって一緒に制作してくれていた。

そうそう。

会議と言えば、結局うちのクラスは文化祭で奇跡的にかき氷の模擬店に決定した。

話に寄れば今回かき氷を第一候補に上げたのは2クラスだけだったらしい。

最終的にはジャンケン勝負で勝ち取ったそうだ。

そこまでかき氷が良かった訳じゃないけど…ちょっと誇らしい気分。


「…きたっちぃ〜!さっちゃんも冷たい!もうヒラランには君しか居ないよ!」

「…あ、そこの塗り残し俺が塗るわ。」

「はい無視コンプリ〜。」


机の上に乗っていた北原君は、近付いてきた平村君を避けるように飛び退いた。

それを区切りに平村君が降参と手を上げる。


「金井君どう思う?アイツら酷くない?これ立派なイジメだよ。もちろん優しい金井君はヒラランの味方だよね?ね?」


ちょうど近くに居た僕の手を取って聞いてきた。

あ…僕にはニックネームないんだ…なんてちょっと悲しい気持ちになったりして。

次は自分の番だとドキドキしていたのに無駄な緊張だった。


「うん、もちろん。」

「金井君はやっぱり金井君だねー。女神様ー。」

「大袈裟だよ。」







「この状況を小西が見たら…考えるだけで面倒くさい。」

「…マジ同感。」


遠い目をする北原君に同意する手島君。

すると何故だろう、吉沢君と犀川君もウンウン頷いた。


「何で小西くん?」

「何でだろうね〜?」


聞いてみた所でニコニコ笑う平村君が頭を傾けて終わった。

まぁいっか。




あきゅろす。
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