05枚目

打って変わって現在食堂。

僕と北原君、手島君の他に、吉沢君と平村君も居た。

あれから犀川君は文化祭の出し物を決める会議へ向かい、バスケ部の小西君はそのまま部活へ行ってしまった。

見ての通り、残った僕達は全員帰宅部です。


「改めまして、手島のデザイン案が満場一致で決定しました。はい拍手。」


まばらに拍手が起こる。

勿論僕は笑いながら拍手を贈った。


「満場一致って…いつの間に投票したんだよ。」

「俺と金井。」

「…ハァ、喜んで良いのかどうか分かんねぇな。」


やれやれと言った感じで手島君が腕を組む。

確かに…満場一致と豪語する割に人数が少ない。

でも…


「僕達の目に狂いはないよ。だから手伝って下さい。」

「俺からも頼む!」


僕と北原君は二人、顔の前で手を合わせた。

美術部員に頼めない今、手島君に頼るしか後はない。


「ま、これがラストだしな。」

「っ…!」


僕はパッと目を開けて微笑んだ。

神様…手島君が神様に見える。

彼は本当に素晴らしい。


「やるからにはお前らも道連れな。」

「はぁ!?」

「え〜、」


吉沢君と平村君が非難の声を上げる。

だけど知ってるんだ。

二人共、何だかんだ言いつつも協力してくれる人達だって。


「お前らも部活やってねぇだろ。卒業アルバム委員とか今は写真撮るしか仕事ねぇんだから…やるよな?」

「手島の威圧感でしょ〜?分かった分かった、平村やりま〜す。」

「…俺も。」


手を上げた平村君に吉沢君も同意する。

ほら、やっぱり二人共参加してくれた。






「じゃあ役割分担ね。」


コップの水を一口飲み、僕は皆に向かって言った。


「まず手島君は下書きして貰っていい?」

「おう。」

「ごめんね、一人は大変だろうけど、こればかりは任せます。で…まだ絵の具とか筆とか何もないから買い出ししないといけないんだけど…これは僕と北原君で行くね。」

「オッケー。じゃあ俺らは〜?」

「えっと、二人は…作業の時に下に敷くもの…どこかでチラシか新聞紙…ビニールシートでも良いから、布の面積分は調達して欲しいんだけど…大丈夫?」

「りょーかい、適当に貰ってくるね〜。」


平村君は笑って頷いた。


「あんまり時間がないから…今言った事をなるべく今週中に終わらせて、来週からは色塗りね。手島君、何か手伝える事があったら気軽に言って。」

「ん。了解。」


ふぅ。

僕は一息吐いて水を飲む。

二人以上の中で話すのは不慣れで正直言うと緊張した。

慣れない事をすると疲れる。


「…よし、まとまった?じゃあ腹減ったし買いにいくか。」


北原君が待ってましたと言わんばかりの勢いで立ち上がり整理券の販売機へ直行した。

北原君の行動力は凄まじい。

そこで僕はずっとお腹が空いていた事を思い出した。


「……。」

「金井君は行かないの〜?」

「あ、行く…、」

「…?何かあった?」

「いや、なんか…、話に夢中でお腹空いてた事忘れてた…。思い出した途端急に空腹具合がね…」

「ぷ、何それ〜!」


平村君が可笑しそうに笑う。

つられたのか、まだ近くに居た吉沢君も小さく声を上げて笑った。




ドキリ

心臓が小さく跳ね上がった。

反射的に唇を噛み締めて…。


─ 煩い、煩い、


心の中で唱えた。

吉沢君が近くに居るといつもそうだ。

未だに気が付けば吉沢君を目で追っていて、遠くに居れば視線を向けてしまう。

なのに近くにいたら意識し過ぎて逆に見れなくなって…。

ちょっとした仕草でも内心荒れに荒れまくり、ドキマギドギマギ…

一緒に居る時の雰囲気、関係、それが以前よりも良くなった事に間違いはないけど…

僕の荒れた心情では、つい余所余所しい感じになってしまう。

相変わらず僕から吉沢君に話し掛ける事はないし、吉沢君から僕に話し掛ける事もなくて。

だからこそ、こんな貴重な瞬間でも上手く動かない身体に嫌気が差した。


「ホント可愛いねー、ザワさんも思うっしょ〜?」

「ザワさん言うな。」

「濁すなザワさ〜ん、本当は思ってる癖にぃ〜。」


何の話なのかは分かんないけど…それ以降吉沢君は返事をしなかった。

また機嫌を損ねてなかったら良いけど。




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