04枚目

「手島確保。」

「…何コレ。」

「いや、それ俺らの台詞だから。何コレ、センス有りすぎてマジ尊敬なんだけど。」


ホームルーム終了後、会話通り僕らは速攻で手島君の元へ向かった。

手島君が早々と帰ろうと立ち上がった所を北原君が腕に抱き付いて捕獲。

そして証拠は揃ってるとばかりに先程のデザイン案を目の前に突き付けていた。


「えー?これ手島が書いたのー?さっすが〜、」

「これを手島が…?あなどれんな。」


近くに居た平村君が北原君から紙を奪い取ってニコニコ笑う。

その横で犀川君が覗き込み関心したような声を出した。

次から次へと小西君、吉沢君、と持ち主が代わる。


「回すな。」

「いや、回さざる終えない。金井なんて真剣に考えて落書き以下だったからな。」

「…酷い。」

「あ、ゴメン…つい。」


遂、ね。

とうとう昨日のフォローが無駄になる発言をしてくれた。

でもしょうがない。

あんなハイセンスなものを見た後なんだ…。

大丈夫、画力の代わりに足と握力と集中力が僕にはある、うん。


「金井絵描けないのか。何でも出来そうなのに意外だな。」

「滅相も御座いません。それより手島君の方が意外だよ。」


僕は手島君を見つめた。

彼こそ男が憧れる、男の中の男かもしれない。

手島君、僕は心から君を尊敬します。


「…なんかスゲェ見つめられてんだけど、何コレ。目キラキラし過ぎ、」

「分かる…、金井の気持ちがスッゲェ分かる!」


北原君と共に尊敬の念を送った。

それは充分すぎるぐらい伝わったようで、苦笑いが帰ってきた。

もうその苦笑いさえも余裕な笑みに見えて格好いい。

君は何者なんだ。


「アハハ〜、金井君って本当手島が好きだよねー。」


─ グシャッ


え?


平村君がそう言ったと同時に紙を潰す音が聞こえた。

反射的にそちらへ視線を向ける。


「吉沢、くん…?」


吉沢君が手に持っているそれ。

グチャッと握り潰されたそれは手島君が考えたデザイン案の紙だった。

何でそんな事をしたのか分からなくて怖くなる。

場の空気がヒンヤリと下がった事に気が付いた。


「吉沢、どうしたんだ?」


誰も何も言えない中、犀川君が先頭をきって聞いた。

流石いつもウルサいクラスをまとめてるだけあって度胸がある。

僕にはなかなか出来ないことだ。


「俺の絵が気に入らなかったか?」

「…いや、悪いな。お前に絵の才能もあったなんて衝撃的でついムカついて。」

「ハァ…どんだけ執念深いんだよ。てか美術の授業で俺の絵見たことあるだろ?」

「あるけど…ほら、何だよコレ。格好良すぎだろ。ピストルとか思いつかなかったしお前本当ムカつくわ。」


吉沢君は笑いながら一度はグシャグシャにした紙を広げて言った。

一時はどうなることかと思ったけど無事に普段の空気を取り戻していく。

変な事にならなくて本当に良かった。


「……。」

「平松君、大丈夫?」

「え?…あ、うん大丈夫ー。」


自分が発言した直後の出来事だからか、固まっていた平村君に声を掛けたらハッとして笑いかけられた。

平村君も元に戻って良かった。

流石に今のはビックリしたよね。





「…金井君ってやっぱり凄いね。」

「え?」

「何でもないよ〜。」


小さい声で何かを言われたけど良く聞こえなかった。

何だったんだろう…。




あきゅろす。
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