03枚目

「アイツウザい。」


僕の知らない表情と声で吉沢君は言った。

彼のたった一言で僕の生活はどん底へ。


何より僕は、失恋をした。


その日の事は忘れられない。

吉沢君が僕の目を見てそう言って、皆も僕に注目していて‥

「次は僕の番だ」と分かった瞬間に頭の中が真っ白になった。

血の気の無くなった冷たい手を握り締めながら俯いて教室を出て行く。

まだホームルームも終わっていないというのに、そんな事はお構いなしで泣きながら寮へ帰った。

ずっとずっと好きだった人にそう言われて、苦しくて、哀しくて、涙が止まらなくて、何でそう言われたのかも分からない。

嫌われた、嫌われていた…そんな事ばかり考えた。

それでいて原因を作り出した彼は特に虐めに参加しなかった。

ただ見ているだけ。

心の中に傷を増やす僕を。

ただ睨むだけ。







「忘れなきゃ‥」


暗い部屋でポツリと声を零す。

自分の声を久し振りに聞いた気がした。


「わすれなきゃ…、吉沢くん‥、わすれなきゃ、いますぐわすれて、わすれて…、すきじゃない…すきじゃないっ…」


暗示するように唱えた。

僕は嫌われているのだからすぐに忘れなきゃ、直ちに忘れなきゃ。

恋心なんて忘れなきゃ。

僕は好きじゃない。

吉沢君なんて好きじゃない。

好きじゃない…!!!!!


泣きながら自分に何度も言い聞かせた。

恋心を捨てないといけないと思ったから。

ただ愚かな僕は『嫌いだ』と言葉に出せなかった。




あきゅろす。
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