21枚目
「僕の事、ウザくて嫌いなんだよね。なのに何で今更謝る必要があるの?何で急に反省した態度とってるの?それは演技?」
「違う…俺、金井のこと勘違いしてたんだ。」
「…どんな風に?」
「それは…」
言葉に詰まる吉沢君を見て思う。
彼とこんなに長く話すのは久しぶりの事だった。
昔は何度か挨拶程度に会話もあったけど…今となって思うのは、あの頃が一番平和だったってこと。
「昔金井が言ったんだ。クラスメートの前で"自分よりも俺の方が顔が綺麗"ってな。それに腹立って…」
「はぁ!?そんな事で!?」
吉沢君が語った理由に小西君が声を荒げる。
「そんな事じゃない!あの時スゲェ恥ずかしかったしムカついたし…だって明らかに金井の方が綺麗じゃねぇか!見てみろこの天使みてぇな顔面をよ!」
「顔面って…もうちょい言い方あるっしょ〜?」
「はぁ…確かに顔面が天使なのは否定しないが…そこまでするかよ普通?」
「ほら手島までー!綺麗なものにはもっと綺麗な表現使おうよ〜。ゴホンッ…見よ!この美しい金井様の顔面を!みたいな、」
「結局顔面って言うのかよ。」
北原君のツッコミが決まった所で、何とか盛り上がりが治まる。
男子高校生のノリって分からない…
でも。
それよりも。
「どういうこと?」
「え?」
「いや、あの…ゴメン。今一分からなくて…、僕だけ理解力ないのかな…」
全員の視線が集まる。
みんな吉沢君の発言を理解しているようだったけど、僕にはよく分からなかった。
昔僕が吉沢君を傷付けるようなことを言ってしまったことは何となく理解出来たけど、その内容がイマイチ分からなくて…
みんなの驚く顔に本当困った。
「お前…マジで言ってんの?それともやっぱり俺らを馬鹿にして…」
「待て待て吉沢、金井のはマジだから!」
少し怒った風な吉沢君を北原君が抑えた。
僕…またマズいこと言ったかな、
「金井。今の話理解したか?お前は昔、金井より吉沢の方が顔が綺麗だって言ったらしい。それを聞いた吉沢がお前の方が綺麗なのにって、馬鹿にされたんだと勘違いしたんだよ。」
「え、なんで!?だって事実だよ!?僕なんかより吉沢君の方が格好良いし身長も高いし顔も綺麗だし友達も多いし明るいしスッゴク素敵だよ!?友達も居なくて暗くて大した取り柄もなくて地味でパッとしない僕に比べて…いや、比べるなんて恐れ多い上にホント申し訳ないよ。そんな人を馬鹿にするなんて…ありえない!僕にそんな喧嘩売るみたいな勇気はまるでないよ!」
改めてまとめてくれた北原の言葉に、僕は反論した。
こんなに長く話したのは久しぶりで、余りの衝撃に息継ぎも忘れるくらい勢いがついてしまった。
「べた褒め…」
誰かが呟く。
みんな僕の勢いに驚いたのか、黙って僕を見つめていた。
僕は急に恥ずかしくなって下を向く。
こんなに人が居る前で吉沢君をべた褒めするなんて…恥ずかしい…。
「あの、昔…、僕が吉沢君に嫌な事言ったんだよね…本当に、ごめんなさい。」
「っ…、」
「でも勘違いだよ?吉沢君に自覚がないだけで吉沢君は誰よりも格好良くて本当に顔が綺麗なんだから。」
僕は最後に精一杯の気持ちを言った。
どうか伝わって欲しい。
決して馬鹿にした訳じゃないって事を。
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