19枚目


「クズはクズ、金井は金井。」

「クズはクズ!金井は金井!」

「吉沢はクズ、金井は天使。」

「吉沢はクズ!金井は天使!」


こ、怖い…。

復唱してるだけなのに、地味に怖い…。


「ほら、金井も一緒に。吉沢はクズ、金井は天使。」

「いや、…そこまで言わなくても良いよ、ね?二人の気持ちだけ頂きます…。」


僕は若干引きながらそれを止めた。

復唱…嫌だ、怖い。


「ゴメンゴメン、冗談だから。」

「俺は本気だけどな!アイツはマジで許さん!てーか俺が吉沢フェイスで生まれてたら、見た目も性格もイケメンすぎて完璧だったのに!なんだよあれ、宝の餅腐れだろ。俺にくれよ吉沢フェイス。ハゲろ、」


ブツブツと物騒な事を言い続ける小西君に、僕はアレ?と思う。


「小西君…吉沢君と友達だよね?」

「え…?あー、まぁ、クラスメートだし。」

「なのにそんなに言って…なんて言うか…」


もしかしたら、僕の所為で二人の友情に亀裂…なんてことないよね?

ヤだよそんなの…絶対嫌だ。


「ゴメンね…、」

「ん?なんで金井が謝んの?」

「だって僕の所為で巻き込んじゃって…」

「あー、大丈夫大丈夫。俺行き当たりばったりでやってるから、そこら辺は上手くやるし。」

「そう…?吉沢君との友情に亀裂、とか、」

「…や、元々そこまで仲良いかって聞かれたらノーだな。吉沢とは今年始めてクラス一緒になったし。金井が気にしてるような事は大丈夫だから。」

「そっか…なんかゴメンね。」


僕はあまりの罪悪感に本気で謝った。

これから険悪にならなきゃいいけど…







「…え?あ、マジでか。うん、えー、あー、や、うん、」


そんな罪悪感いっぱいの僕の横で、北原君が電話口で唸っていた。

内容は分かんないけど、どこか戸惑ってて煮え切らない感じ。

緊急事態発生?


「金井さん金井さん。なんか吉沢さんが今すぐ謝りたいと…どうします?」

「え…?」


予想外の名前に驚く。

吉沢君が僕に謝りたい?

だって、でも、吉沢君は僕と喋るのも嫌なくらい僕を嫌ってて…

なのになんで?


「どうする?」

「…ど、しよ…」

「嫌なら拒否るけど、」

「ぇ…と、」


どうしよう。

きっと、決めてもらうのは簡単。

でも自分で答えを出さないといけない、そんな気がする。


「分かった…」

「じゃあこの部屋に呼ぶけど良いか?」

「どうぞ…」


北原君は今の居場所を伝えると通話を切った。

了解したものの、怖くて仕方がない。

次は何を言われるのか…想像もつかなかった。


「金井…大丈夫。俺ら居るからな?クズの吉沢が次何かしたら必殺コニタンパンチかますし、安心しろよ。」

「う、うん…」


不安だ…。





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