18枚目


「もっと静かに開けろよカス。」

「イテッ、サーセ…いやいやいや、手島のモノマネ今いる!?」

「へへ、今のかなり似てね?」

「いーや、甘い。手島はもっと目つきが悪いな。こーんな感じで。」

「んー、こうか?」


…もぅホント、何も考えたくない……。

頭上で聞こえる手島君の物真似に馬鹿馬鹿しくなってきた。

二人はよっぽど手島君の物真似が気に入ったのか『お前が黙れカス』を交互に連呼し始めた。


「お前が黙れカス。」

「お前が黙れカス!」


…なんだろ。

ずっと聞いてたら自分が言われているように感じてきた。


「カスでごめんなさい。」

「うわっ、て、そうだ!金井なんで床に!?死んでんの!?」

「んな訳ねぇだろカス。」

「だよなカス!」

「カスでごめんなさい。」

「……もう手島の真似は止めるから、金井もそれ止めて下さい。」


便乗してたら北原君に止められました。

便乗の仕方が悪かったな。








「金井、元気出せよ〜。」

「うん、」

「金井、俺は金井が好きだぞ〜。金井をストラップにして携帯につけたいくらい俺の気持ちは本気だぜ。」

「うん、」


小西君がずっと、僕を元気づけるために話し掛けてくれる。

お世辞でもなんでも、僕と一緒に居てくれる小西君が嬉しくて、何だか勇気が湧いてきた。


「金井〜、金井の為に一曲歌うよ〜。」

「小西君、ありがと…。もう、良いよ。」

「え!テメェの歌なんて聞きたくねぇぜ的な!?」

「…んーん。小西君のおかげで少し元気出た。だから、ありがと。」


僕はズルズル鼻水をすすってお礼を言った。

そして顔を伏せながら洗面所へ行き、ティッシュで鼻をかむ。

次に顔をバシャと勢い良く洗い、また部屋に戻った。

もちろん…今度は二人に顔を見せて座る。

いつまでもあんな事してたって、面倒くさがられるオチだから。

それは嫌だ。


「なんかごめんね。もう大丈夫…じゃないけど大丈夫。」

「や、どっち。」

「多分大丈夫…じゃないかな。」

「…だからどっち。」


どっち、と聞かれたものだから「どっちもだよ」と僕は答える。

とりあえず…こうして良い友達が2人居る事、それだけが救いになった。







「金井、これからの事だけどな…」

「………、」


正直、今は何も考えたくない。

でもきっと、二人が帰って夜になれば今日の事を考えてしまう。

それで絶望的になって、一人で泣いて…学校に行けなくなるに違いなかった。

だから二人が居てくれる今の内に考えるのが一番良い。

嫌でも、一緒に考えないと…。


「吉沢の事は金輪際気にするな。」

「……。」

「気にするななんて難しいかもしれないけど…言わせたい奴には言わせとくしかないんだよ。人の悪口言って満足してるような奴はその程度の人間なんだ。」

「そうそう!相性の合わない人なんていっぱい居るからな!吉沢はクズなりに見た目イケメン、性格ブス、という人生を歩んでる訳だし、金井は金井で見た目も性格も美少年街道を横臥しちゃえばいいんだって!」

「クズはクズ、金井は金井。これ合い言葉な。」


吉沢君、凄い言われようだよ。

しかも二人で今出来た合い言葉の復唱を始めて、なんだか怖くなってきた。





あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!