13枚目


「あー、今日マジ幸せだわ。両手に花!両手に金井と平村!他は論外。」

「…一言余計だぞハゲ、」

「ふんっ、手島と違ってまだハゲてないもん。」

「……、」

「わ、サーセン!殴らないで!」


握った拳をブルブル震わせる手島君に、小西君は平村君を盾にガードした。

見てる分には面白い。

さっきより会話についていけなくなったけど…。


「…てか平村のどこが花だよ。アホなだけだろ。花が咲いてるの間違いじゃね。」

「吉沢ひどーい!俺アホくないしー!テストの点数めっちゃ良いしー!」

「そう言う意味じゃ…、」

「分かってないなぁ、その抜けてる感じが可愛いんだろ?花だ花!天然最高!いやっふー」


意味不明な事を叫んだ小西君。

それを見た北原君が「こりゃ相当な処女厨だわ」と、こちらも意味不明な事を呟いた。

訳が分からない。


「それより金井くん!」

「ぁ、はい。」


急に話し掛けられてビックリした。

その相手は平村君で、ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべていた。


「俺平村、宜しくねー。」

「あ、うん、金井です、宜しく…。」

「うわぁ、噂通りクールだー。格好いい〜。」

「え?」


く、クール?

そんな事、始めて言われて僕は戸惑った。

しかも格好いいなんて…言われた事がない。


「全然…平村君達の方が格好いいよ、」

「…えー、お世辞は良いってー。」

「お世辞なんかじゃ…僕なんて本当に全然…平村君の方がお世辞だよ。」

「えー、そんな謙遜しなくて良いのにー。」


僕は本当に戸惑って、出来る限り否定した。

本当に平村君とか…

…吉沢君、の方が格好いいよ。

身長が高くて、手もおっきくて、二人共理想の男って感じ。


「相変わらずヤな感じだな。」


僕が二人の事を考えていると、冷たい声が聞こえた。

あまりの冷たさに部屋の中がシン…と静まり返る。

急に変な緊張感が漂った。

そして反射的にある方向へ視線を向けと、二つの瞳と目が合った。


「変わってないな。」


嫌な感覚を思い起こさせるその目に心拍数がドッと上がった。

あの日。

僕をウザイと言った。

あの日の目。


「本当は内心俺らを見下してんだろ?クールかなんか知んねぇけど、ホント目障りだわ。気持ちわりぃ。」

「ッ…、」

「吉沢!お前!!」

「あ、金井くん!」







僕は耐えきれなくなって、あの日のように部屋を飛び出した。

ショックだった。

好きだったのに、本当に嫌われていた。

密かに想う事も許されないのだと知った。


──ねぇ、僕は、吉沢君に、何かした?


そう思うと涙が出てくる。

だけど僕には、それを聞く勇気がない。

友達が出来たって…何も変わってないのだから。





第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!