09枚目

「いや、金井は案外話しやすいし、…だから小西も誘ったんだろ。まぁ、金井に近付きたいっていう下心もあっただろうけど。」

「下心って…。」

「俺の位置を狙ってる奴が多いって話。みんな本当は金井と友達になりたいんだよ。」


言葉が出なかった。

北原君の表情が真剣だから、本当なのかも…なんて期待してしまう。

そんなの僕だって同じだよ。

僕だって友達が欲しい。

みんなともっと仲良くなりたい。

僕は…期待しても良いのかな?


「具体的に誰…とか…」

「クラス全員。」

「それは嘘、有り得ない。」

「いやいや馬鹿か。クラス全員だっつの。むしろ同学年全員って言っても良い。」

「えーいくら何でもそれは言い過ぎだよー。」


僕は冗談だろうと笑って返した。

そしたらまた溜め息が返ってきたけど気にしない。

北原君は思い込みが激しいのかもしれないから。


「うー、やっぱり自信ない…もし誘われたら北原君も付いて来てよ…。」

「え〜、めんどくせぇー。」

「うわー最悪。僕を見捨てる気…って言うか駄目?」

「可愛く言うな。」


ペチンと緩く頭を叩かれた。

可愛く言ったつもりはないです。


「その時の気分次第だな。」


僕は北原君がその時に乗り気になってくれる事を一生懸命祈った。




「金井ー、今日の放課後また集まるんだけど来るか?」


一週間も経たないうちに誘われた。

心の準備なんて出来たもんじゃない。

僕の思考は一時停止した。


「行く行く〜。」

「北原は誘ってねーよ。普通にいいけどさー。」

「俺に対してひでぇな!」


北原君の笑い声にハッとする。

僕は北原君が行くなら僕も行くと小西君に声をかけた。

同時に優柔不断な自分に嫌気がさす。

これじゃあ自分の事も自分で決められないダメ人間だ。

自分が行きたいから行くって伝えたかったのに、僕がヘタレな所為で北原君に頼ってしまった。

こういう嫌な所を見付けると気が滅入ってしまう。

せっかくチャンスだったのに…


「金井、顔色悪いぞ。大丈夫か?」


急に黙り込んだ僕を奇妙に思ったのか、北原君が僕の顔を見つめてきた。

僕は「考え事をしていた」と軽く苦笑いで返した。


「やっぱり上手くいかないなぁ…」

「何が?」

「……まぁ、色々と、」

「そっかそっか、」


会話の中身は曖昧なのに北原君は同意してくれる。

だから北原君には何でも話せるのかな。

つまり聞き上手って事だ。

…凄く羨ましい。




あきゅろす。
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