#20
「ご馳走様でした。」
間もなく、松戸が小さな声で言った。
まるで感情のこもっていない様な声に思わず視線を向ける。
松戸は弁当箱を丁寧に片付け始め、そしてもう用はないとばかりに立ち上がった。
「ぁ…、一夜たん、もう帰るのー?」
「……はい、」
「そっか、じゃあ俺も、」
「失礼します。」
松戸は嘉藤の言葉を最後まで聞く前に屋上から出て行ってしまった。
まるでもうここには居たくないと云うような行動に加持は目を丸くする。
話す口調も昨日より随分と冷たくて、やはり嫌々連れてこられたのだと加持は解釈した。
「嘉藤…お前やっぱり…」
「俺も失礼!」
恐らく松戸を追い掛ける為だろう。
嘉藤も加持の言葉を聞かず、早々と立ち去ってしまった。
「イッチー君…何だか怒ってた…?」
「……どうだろうな、」
松戸が何をどう感じているかなど分からない。
ただ、あの冷たい声だけが加持の耳に残った。
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