#15
「あ、れ…?」
あれから10分程経った頃、松戸はゆっくり体を起こした。
そして加持の存在に漸く気が付いたのか、不思議そうな声を零した。
「…大丈夫か?」
「…ぇ、………」
「……さっき、たまたま通りかかっただけだ…。それより怪我してる‥、保健室行くか?」
「…だいじょうぶ、です…」
「んな訳ねぇだろ。いいから…一緒に行くぞ。」
明らかに大丈夫な状況ではない。
しかし大丈夫かと聞いたのは加持だった。
松戸が"大丈夫"と返してきたのは自分の言い方が悪かったのだと加持は気付き、同時に大丈夫かとしか言えない自分を不甲斐なく思った。
そんな自分でもこれくらいの事は出来る。
「立てるか…?」
「ホントに、ホントに大丈夫です……自分で立てますっ…」
「っ!…っぶねぇな…!無理すんなよ!!!」
立てると言い張った瞬間、脚をガクンとさせて転びそうになった松戸をギリギリ抱き止めた。
加持が思わず怒鳴れば、松戸は体をビクッとさせ、俯きながら「ごめんなさい…」と小さく謝った。
加持は仕方がないと、抱き止めた体をそのまま抱き上げる。
加持は松戸のあまりの軽さに驚きながらも足を進めた。
「加持くんッ…何、してるんですか…降ろして下さい…!」
「…立てねぇんだろ?保健室まで我慢しろ。」
「ボク、自分で歩けますっ…自分で…」
「…るせぇ、甘えとけ。」
その後は何を言われようが無言を貫き、横抱きをしながら保健室へ連れて行った。
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