#07


「初めは身分も何も分からないし、世の中物騒なのでね、追い返したのです。特にあぁいった少年は盗み目的だったりしますし…。」



ユースの言葉にシドは険しい表情を浮かべる。



"納得がいかない"



そう顔に書いてあった。



「孤児院の子供達の為に出稼ぎ…俺から見たらアイツも十分子供に見えるがな、」

「そうなんですが……ネモアは本当に良い子なんです。私は今まで色んな人間と接してきましたが、あそこまで一生懸命で健気な人間は居ませんよ。‥だからどうかネモアを働かせてやって下さい。もしネモアが盗みでもした日には私が責任を取って此処を出て行きます。」



ユースにそこまで言わせる少年ネモア。

シドはあの少年を思い浮かべながら、不思議だと尚も眉間に皺を寄せていた。



「…分かった、そこまで言うのならお前を…アイツを信じる。」

「陛下っ…、ありがとうございます!!」

「だがしかし、あんな子供にこんな広い部屋の掃除を任せるのはいかがなものか。別の仕事はないのか。」

「別の仕事……ですか、」

「…動物の世話、これでどうだろう。比較的安全ではないだろうか。」

「は…はい!ネモアに伝えておきます。」



ようやく納得してくれたシドにユースはホッと息を吐いた。



「では…お時間を取らせて申し訳御座いませんでした。失礼致します。」

「……待て、」

「はい。」

「動物の世話をさせるにしても清潔な方がいいだろう。アイツに新しい服を着せてやれ。」



シドの言っている事は正論だった。

しかしユースにはただの正論でなく、ネモアに対する優しさに感じとれた。



「承知しました。」



ユースは軽く微笑んで部屋を後にした。






残されたシドは、何故かネモアという少年の存在を思い浮かべていた。


不思議


その言葉が似合うだろうあの少年を。





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