#02
『約束だよ』
綺麗な容姿、綺麗な声。
天使の声がまるで悪魔の囁きの様にシドを惑わし、脳内から姿を消さない。
シドはベッドから降りると鏡台の前に座った。
右瞼の皮膚に出来た赤い斑点。
それは生まれた時からあったモノで、幼児によく見られる症状だった。
しかしその母斑は成長途中で消えるのが一般的なのが、シドの母斑は成長をしても消えなかった。
周りの大人達は病気ではないかと騒ぎ検査も行った。
調べた結果異常はなく『偶然跡が残ってしまっただけだ』と結論付けられた。
指先で斑点に触れる。
シドはこの斑点に触れる度、変な感覚に襲われた。
懐かしい、
何故か懐かしい。
何が懐かしい?
分からない。
ただ懐かしい。
言葉では言い表せないぼんやりとした感覚にシドは日々悩まされた。
シドの中だけで特別な何かを感じているのだ。
この斑点がただの跡ではないという事。
夢の中で天使の唇がソッと瞼へ触れた瞬間の事。
これは偶然なのか。
シドにはやはり何も分からなかった。
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