#01
『約束だよ』
儚い微笑みが美しいと思った。
この世の綺麗なモノ全てと比べてみても、夢の天使は素晴らしく綺麗で、
瞼の上に落とされたキスに眩暈を感じた。
約束だと言う天使。
一体何を約束したというのか。
── 約束って何だ?
聞きたいのに声が思うように出てこない。
そうこうしているウチに天使の姿は薄れていく。
駄目だ…、
消えるな、行くなっ…!!
「シド様!!!シド様!!!!」
シドが目覚めて最初に見たのは心配そうな涙声で自分の名前を叫ぶ使用人アレンの姿だった。
次に「シド様良かった‥」という安堵の声も聞いた。
「シド様‥、大変うなされていたのでとても心配しました。」
「…そう、か…、俺は大丈夫だ……アレン、すまないが一人にしてくれ、」
「……はい。ご用があれば何時でもお呼び下さい。」
まだ心配そうに見てくるアレンを外へ出し天井を見つめる。
今は一人になりたかった。
「(また…だ。)」
幼い頃からシドは、天使が出てくる夢を見た。
天使は決まって『約束』だと言うのだが、シドには天使の存在も何を約束したのかも分からなかった。
シドは夢の中で声が出せない。
それ故に聞きたくても聞けず、同じ夢を繰り返し見るばかりだった。
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