#03
少女が13歳になった日。
夢の中、遠い昔の記憶を見た。
目の前には悪魔の悲しそうな顔。
いつもの不機嫌そうな表情は欠片もなく、悲しみ一色で溢れかえった瞳が嫌に印象的だった。
夢の中の自分はその瞳を見つめ、悪魔の目蓋に唇を寄せる。
─ あぁ、不思議だなぁ…、
夢だというのに、目蓋の感触が唇に残る。
皮の薄い、少しザラッとした目蓋の感触。
─ 本当に、不思議。
その感触が愛おしいなんて。
もっと触れていたいなんて。
とても不思議…─
お互いの顔が離れると、今度はフワフワ宙に浮いていく感覚。
─ あぁ、墜ちるのか。
不思議とそう思って、急に心の中が穏やかになった。
それなのに目の前の悪魔は依然として悲しげで…見開いた目から涙を零した。
─ 大丈夫だよ、泣かないで
伝えたいのに上手く伝わらない。
だから笑った。
大丈夫だと言い聞かせるように。
天使は笑った。
『行くな、アンジェッ…ー』
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