♯09
数年の間でデェイルは、天使の事を沢山知った。
一人称や話し方は『天使らしく美しく話すように』と幼い頃から教育されてきた事。
本当は一人称が僕である事。
花の蜜が好きな事。
方向音痴な事。
歌が好きな事。
よく笑う事。
知れば知るほどにデェイルは天使の虜となった。
ただ一つ、デェイルは天使の名を未だに知らない。
彼の名を呼びたい。
気持ちが膨らむ一方で、知ってどうするんだと一線を引いていた。
悪魔であるデェイル、そして天使。
真逆の存在である者同士が会い続けるだけでも十分『罪』な事なのだ。
もし名前を知ってしまえば駄目になるとデェイルは理解していた。
天使に対する感情の全ても知ってはいけない。
それが闇に繋がると分かっていた。
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