01
つくづくと思う。
青柳様に合わせる顔がない。
僕は溜め息を吐いた。
あの事件から数日が経った。
バリカンで髪の毛を刈られた松坂君は最後に見た時にはあんなに泣いていたのに、あの時が嘘みたいに笑ってる。
真木君だって楽しそうで、僕は凄く悔しかった。
僕は気がついた。
だって、僕には本当の友達なんて一人も居ない。
広く浅く、上辺だけ。
ずっと友達なんて要らないと思ってたけど。
だけど…クラスメートの一部と顔を合わせ辛くなってから余計に肩身が狭い思いになっていた。
「ハァ…。」
教室は疲れる。
何気なく視界に天野が入った。
いつもは寝ているのに今日は起きてるんだなぁ…なんて。
こんな観察ぐらいでしか休み時間を潰す方法がない事が惨めだった。
天野と言えばつい最近、ムカつく出来事がまたあった。
驚くことに天野の部屋に書記である城本様が入っていったのだ。
しかもいくら待てども出てこない。
諦めて途中で帰ってしまったけど、ちょっと用事があります程度の時間ではなかった。
青柳様だけならず城本様まで誑し込むなんて…絶対に許せない。
風紀室で惨めにも助けて貰った件だって思い出したくないくらい。
嫌いだ嫌いだ。
本当に天野が大嫌いだ。
「青柳様。」
僕はまた作戦に出た。
今度は絶対に失敗しない作戦。
まず謝って、その後に天野がどれだけ軽いのかを話す。
そうすれば青柳様は目が覚めて僕の事を見てくれるはずなんだ。
「なに…?」
青柳様は気まずそうに…でも笑ってくれた。
本当に優しい方だ。
「この間はご迷惑をおかけしてすいません…僕、本当に反省しています。」
「…勘違いなんでしょ?気にしすぎるのは良くないよー。元気出して?」
「青柳様…、」
本当に優しくて心まで綺麗な方だ。
あんな愚かな事をした僕を責めずに気を使って下さる。
だから青柳様が好きなんだ。
こんな人は他に居ない。
「ありがとうございます。」
「いやー…お礼言われる事なんてしてないよ?」
「本当に青柳様はお優しい…だから大好きなんです。」
「あーうん…ありがと。」
困ったように笑われる。
笑ってくれるのは嬉しいけれど違うんだ。
僕が一番に欲しいのは天野に見せていたような甘酸っぱい笑顔。
特別な人にだけ見せるような…そんな笑顔…。
「天野が…。」
「天野クン?」
「天野隊長の部屋に…生徒会の方が出入りされています。」
緊張する。
でも大丈夫、嘘は言ってない。
だから大丈夫。
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