02
「誰?」
「いえ、それは…。」
「誰か教えてよ?そこまで聞いたら気になるでしょ。」
青柳様は笑って聞いてきた。
その笑顔が不自然に見えて、いつもとはちょっと違っていた。
どこか必死にも見える反応に嫌な気持ちが湧き上がる。
天野が憎い。
なんでなんでなんで?
なんで僕じゃなくて天野が愛されてるの?
「城本様です…。」
「へぇ、そっか。文也クンがねぇ…。」
「天野隊長は噂もありますし…。」
「噂か…そう言えばあったっけ。俺みたいに。」
青柳様は俯いてしまった。
声に覇気もなくなっている。
可哀想だ…本当に。
青柳様にこんな顔をさせるなんて、つくづく天野が憎くなった。
「大丈夫ですか…?」
「……。」
立ち尽くして何も言わなくなった青柳様。
あまりにも反応がないので、僕は青柳様を支えながら部屋へ向かった。
大丈夫、大丈夫。
このまま行けば後は慰めるだけ。
長かった目的がもうすぐ達成されるんだ。
僕は嬉しくなって、どんどん気持ちが高ぶっていった。
青柳様に抱いてもらえる…それが何よりも嬉しかった。
「姫路君…、青柳君どうしました?体調が悪いんですか?」
本当にサイッアク!
なんて天野はタイミングが悪いの?!
青柳様の部屋まであと少しの所で空気の読めない天野に出会った。
しかも隣には何故だか篠山君。
何なの!
もしや城本様だけじゃ飽き足りず篠山君までなんてこと…!
本当に天野は最低最悪の人間だ。
「珍しいですねぇ?篠山君が人と居る所なんて久しぶりに見ましたぁ。」
何とか笑顔を作る。
探るように言うと天野は笑って冗談っぽく話した。
「ふふ、篠山君、僕たち珍しいらしいですよ?」
「珍しいコンビ、な…。」
意味が分からない。
あの篠山君が笑った。
それはそれで驚いたけど何だか距離が近いように見える。
なんて言うか、心の距離…みたいのものが。
「なぁ…それより大丈夫か…?」
篠山君がグッタリした青柳様を見て心配そうな顔をする。
やっぱり珍しい。
僕が反応に一瞬困ると青柳様が顔を上げた。
「天野クンか…、」
「っ…大丈夫じゃなさそうですね。保健室には行かれました?」
横から見てもさっきより顔色が悪い。
血の気が引いて白い肌が更に白くなっていた。
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