01
つくづくと思う。
この学園には揉め事が多すぎる。
特に最近は生徒会が可笑しい、なんて話題が多い。
原因は編入生の田代祥平という奴らしい。
だけどまぁ、正直全部どうでも良かった。
親衛隊とか生徒会とか全部馬鹿げてる。
そのくせ親衛隊に身を置いて、その上隊長なんかまでやっているのは、流れに身を任せた結果だった。
いわゆる成り行きってやつ。
まぁ別に、今の現状に不満がある訳でもないし、周りがそれで満足するならどうでも良かった。
「まぁ良いや…。」
遅刻してゆっくり歩いていたら、見たことのある連中が噂の編入生と絡んでいた。
どこの親衛隊かは知らないけど、うちの隊ではなかったはず。
『いや、確実に違うだろうな。』
そう思えるのには理由があった。
生徒会書記の城本。
彼は以前より好きな人が居る事を公言している。
相手が誰なのかは知らないけど、それは恋人の存在を明かしているようなものだった。
だから城本の親衛隊にはそれを分かっている上で好きな奴しか居ない訳で、一番温厚なグループだった。
まぁ、だから入隊した訳だけど。
暇潰しと気紛れ、城本とそれなりに仲が良いのも理由の一つ。
でも現実は厳しくて、暇潰しにもならない詰まらない場所だった。
俺にとって親衛隊は期待外れの適当な居場所。
話を戻して、連中と編入生は喧嘩中。
何やら言い争っていた。
俺は揉め事が嫌いだ。
あの中にわざわざ入って仲裁するのは馬鹿らしいし、勝手にやってれば良い。
なんの躊躇もなく見て見ぬフリをして素通りした。
仲裁なんて想像するだけでもつまらない。
ヒーローを気取った所で親衛隊の奴らはもっと田代に当たるだろうし、何もしないのが一番だった。
「篠山、遅刻の理由は。」
「寝坊しました。」
「まったく…早く座りなさい。」
「すいません。」
教室へ入ると注意された。
俺以外全員居る…と思ったが、珍しく天野彼方の席が空いていた。
遅刻するタイプではないだろうに。
「おはようございます…。」
「…座りなさい。」
「はい…すみません。」
暫くすると天野が来た。
先生酷いな。
俺には理由を聞いたのに天野には聞かない。
まぁ良いや…。
理由を考えるのも面倒だ。
「では最後に答案を返却して終わります。」
先生が答案のプリントを配り出す。
最近やった数学の小テスト。
それが最悪で、2つもケアレスミスしてた。
でもまぁ良いや。
小テストだし。
授業が終わるとすぐに天野は立ち上がった。
それは凄く珍しいことだった。
このクラスは人気者ばかりが集まってる。
だがみんな基本的には真面目で、授業中も休み時間も静かだった。
まぁ…騒がしい時もあるにはあるけど。
でもやっぱり物静かな人が多くて、その中でも特に静かなのが天野だった。
誰とも絡まずやたらと寝てる。
そんな天野が立ち上がったのだ。
嫌でも目について自然と動きを追ってしまう。
ついつい見ていると、何故か天野はブレザーを脱いで上からジャージを羽織った。
凄い謎、めちゃくちゃ謎。
そんな謎の格好のまま教室を出ていった。
益々謎。
どこ行ったんだろ。
天野彼方の謎が更に増えて、クラスメートがざわつきだした。
各場所で皆の考察が始まる。
俺は外を見て、漠然と何故だろうか考えてみた。
『どうでも良いけど気になるよな。』
そんな気になって俺も立ち上がった。
天野が立ち上がった時は皆見てたくせに、俺が立ち上がった時は誰も反応しない。
不思議だけど本当のことだった。
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