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真心文庫
光と闇たちの対面
中は外と打って変わって全てが純白色に包まれていることもあって眩しかった。
中には大きなシャンデリアとクリスタルの像がど真ん中に構えてあった。
陽月たちはそれに構わず、像をよけてその先にある階段を上り、回廊を走った。
回廊を走っていると前のほうから2人の人間の姿があった。
1人は普通だがもう1人は黒い。
だがそれにも構っていられないので陽月と絆は
2人の顔も見ずに横を走りぬけようとした。
それをなぜかは分からないが黒いほうに捕まった。

「っ・・・・!」

「きゃっ!」

いきなり手首を捕まれ、動くことが出来ない。
黒いほうが低く、感情のこもらない声で一言言った。

「静止せよ」

陽月はちらりと黒いほうの顔を見た。
その男は顔を真っ黒に染められた仮面で覆っており
顔つきはまったく分からない。
だが、仮面に開けられた空洞の向こうでは殺気を放つ鋭い眼光が見える。

「ぅぅ・・・・・」

「・・・・・」

絆は怯えている。
陽月はただ仮面の男を見ている。

「α。ご苦労だった。」

もう一人の人物が陽月たちのほうに向き直った。
さっきは顔を確認しなかったが、
目の前の人物は仮面の男とは真逆の雰囲気をまとっている。
言葉で表すならばこの男は光で、仮面の男は闇だろう。
だが、光のほうは侵入者を捕まえたと言うのに妙に上機嫌だ。

「放したまえ。」

一言そう言うと、仮面の男、αは直ぐに二人を解放した。
絆は開放されると光のほうにお礼を言おうと顔を見てみた。
が、絆は思わず少しだけ頬を赤くした。
いくら絆に育った町で結ばれ人がいるとはいえ、
やはりその光はこの世のものとは思えないほどきれいな人だったのだ。

「え、あ、ありがとうございます・・・・」

絆はそれだけ言うと陽月の後ろに隠れた。
陽月はただこの2人を警戒するように見つめている。

「何のようだ?」

αはその一言がかんに障ったらしく陽月に手を上げ振り下ろ・・・

「やめよ!」

そうとしたが光に窘められ、すぐさま手を下ろした。だが仮面の奥の目はさらに鋭さを増した。

「何のようだ と問いたいのはこちらのほうなんだが・・・。ふふふっ。」

光はきつい言葉を言っているのにもかかわらず、微笑を絶やさない。
この状況を楽しんでいるようにさえ感じられる。

「えっと、本当にすみません!あたしたちこの先に出たいだけなんです。だから、その・・・・今回は見逃してください!」

絆は何を思ってこんなことを言ったのか分からないが
一応不法侵入したことについては悪いと思っているようだ。
さらに警備員たちをK.O.させたことを・・・。
陽月は何も言わず、ただこの通りすがり際に出会った
2人を観察するかのような目で様子を見ていた。

「見逃せと?ふふふっ それは無理な相談だ。
このまま返すわけにはいかない。」

「ぅぅ・・・・・なら・・・それならあたしだけ捕まえてください!
あたしだけ捕まえてこの子は見逃しに・・・!」

陽月は「何?」と言いたげな顔で絆を振り向いた。

「君はとても優しい人だ。
だが、ここは我が学園の敷地内。
無断で入っただけではなく職員に手を出したことを・・・僕が見逃すとでも?」

光はそういうと絆に笑顔を向けた。
絆は最初はキレイな笑顔だと感心していたが今は恐怖だ。

「でも・・・それでもこの子は・・・!」

陽月は何かを言おうとした絆の口を手で押さえた。

「そんなに罰を与えたいのなら私だけで十分だ。
これは私の判断でしたこと。こっちは関係がないのだ。
もともと反対だったようだしな。
私はどんな罰も受けよう。こっちはここから出す。」

「ふふふっ。罰を与える?
とんでもない。そんなつもりは全くないよ・・・。」

「では何がしたいのだ?
確かに私がしたことは犯罪に当たるがお前らは何なのだ?
名前も名乗らず、聞かず。一体何が望みなのだ?」

陽月は2人を少しきつめに睨みながら問う。
絆は口を押さえられたままでしゃべることが出来ないでいた。

αは陽月の態度と言い草にそうとう頭にきているらしくさらに睨みつけた。
αとは真逆だが、光のほうはいまだに微笑んでいる。
だが、次に紡ぎだした声は顔には似合わずかなり真剣なものだった。

「望み?たくさんありすぎて困るぐらいだ。
・・・まずは名を聞こう。
侵入しといてこちらから名乗れなど言える立場ではないだろう?」

絆は陽月の手をどけて早く立ち去れると思い、さっさと名前を言って行こうと思った。

「あたしは・・・結心 絆です。」

「絆・・・。いい名だね。
では、そちらも名乗ってもらおうか。」

光はあえて自分は名乗らずに先に陽月の言葉を待っている。

「・・・・・・・・・・・・・・」

絆はさすがにこれはいけないだろうと思い、陽月の耳元で囁く。

(陽月ちゃん、はやく名前言ったら出れるかもしれないよ?)

(名を名乗ったところで出す人間はいない)

(でも、早く終わらせたいな。何か、この人たち、怖いよ?)

(むぅ・・・・・・・・)

(ね?)

小さな会議(?)が終わり、またαと光を振り向いた。

「・・・・・・呪われ魔女。」

光はその言葉をまっていましたかと言いたげな表情をしたが
すぐにいつもどおりの表情に戻った。心のそこから嬉しそうな表情に。

「白夜 陽月さんだね。うわさはかねがね聞いている。ふふふっ」

笑顔を浮かべる光に対し、αは恐ろしいほどの殺気を醸し出している。

「陽月ちゃんの名前・・・」

陽月は光のほうを冷たく見下したような微笑みで睨んだ。

絆の反応にも陽月の反応にも満足したらしく、ようやく光が名乗った。

「我が名はテルミ・アフロディーテ。
ここ、聖獣学園の生徒会長を勤めている。
以後、お見知りおきを・・・。」

「学園・・・?」

絆は今までの会話を少し巻き戻してみる。
そういえば、さっきも学園と言っていた。
しかもここは学園の敷地内と。
そこでようやく絆は理解した。
ここは城や屋敷ではなく、学校なのだと。

「え、学校?!ここが?!」

「ああ。学校だよ。驚いたかい?」

「え、ここが学校で、敷地内で、それであなたがこの学校の生徒会で、しかも生徒会長だから・・・
つまり・・・え?ええ?すっごく偉い人??」

絆はことの重大さに改めて気がついた。
そういえば、全然気にしてなかったけど、
名乗る前までずっとこの人のこと何だと思っていたのだろうか。
気にしていなかったがよく考えてみれば
偉い人間でない限り、こんなことは出来ないはずだった。
陽月は上手くまとめようとしている絆を不思議そうに見ている。

「ひ、陽月ちゃん、あた、あたしたち、やばいんじゃ・・・」

「絆、君、何をそんなに慌てているのだ?」

「だ、だって、学校に不法侵入して、逃げ回って、警備員さんたちK.O.させて、
おまけにこの生徒会長さんに結構失礼なことしちゃって・・・無事に帰れないよ?」

「ここが学校であることならここへ入ったときに気づかなかったのか?」

「え?」

「君、名前が刻んであった表札に気がつかなかったのか?」

「え、あ、うん、ごめん。」

会長は楽しそうに二人のやり取りを見ていたが
絆の様子からかなり自分を警戒しているようだったので正直に言った。
ただ、ものすごく楽しそうだが・・・。

「お取り込みのようだけどひとついいかい?」

絆はまだ動揺しているらしくその言葉が耳に入っていなかった。
陽月は少し警戒するような目で会長を見つめる。

「君たちを別にどうこうする気は全く無い。
大事な客人だからね。最初は君たちを試させて貰っただけだ。
不快感を与えてたならば謝ろう。」

会長はαを突き、二人に謝るように促した。
αは本位では無かったが会長の命令には逆らわずに頭を下げた。
だが殺気は全く衰えていないので、謝ったうちに入るのか疑問だが。

「いや、あの、悪いのはあたしたちなので謝らないでください。本当に。
ね?陽月ちゃん。」

「謝られる覚えなどない。それよりも私たちはここを出る。」

「帰らせるとは一言も言っていない。
・・・今が何時だと思っているんだい?」

「えっ・・・」

時計は持っていない。
でも大体あの暗さから察するに夜中なのだろう。
・・・・そういえば、泊まる場所など当ても無ければ帰る場所などあるわけない。

「え、えっと、夜中?」

「ああ。そんな時間に女性を外に放り出すほうが失礼に値する。
しばらくここに泊まっていくといい。」

「え、いいんですか?」

「ああ。勿論。」

そう言うと陽月のほうを見た。絆は泊まってくれる望みはありそうだが
会長的に陽月がどう出るかがどうしても気になるらしい。
絆にも興味はあるがやはり陽月のほうが興味深い人材だ。

「よかったね、陽月ちゃん」

「悪いが泊めるのなら絆1人でいい。私は外で休む。」

「陽月ちゃん、ダメだよ。
親切に泊めてくれるみたいだし、外は寒いよ?」

「あいにく、魔女には寒いと言う感情がないものでな。」

「陽月ちゃん!」

いきなり絆に怒鳴られ陽月は眼を見開いた。

「陽月ちゃんは魔女じゃないの。
陽月ちゃんが一緒に泊まらないならあたしも外でいい。」

「む・・・・・ぅ・・・・・・・」

「決まったようだね。じゃあしばらく待ちたまえ。
α。みちるに繋げてくれ。」

会長が命じるとαは殺気を一時的に消し、小型の機械を数秒操り一言言った

「接続完了」

「ごくろう。・・・ああ、みちるかい?夜分遅くにすまない。」

会長はひとまず陽月と絆から離れ、通信相手と会話し始めた。

「何か・・・会長さんって、やっぱりすごいんだね。」

「・・・・・・・・。」

陽月は不思議なものを見るように通信をしている会長を見ているのだった。

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あきゅろす。
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