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真心文庫
外からの訪問者
すっかり日の落ちた広い場所を2人の少女たちは歩いていた。
夜のため、辺りはすっかり暗く、おぼろ気にしかものを見ることは出来ない。

「陽月ちゃん、今日、どうするの?ここじゃ、休める木もないよ?」

1人の少女が前を歩く陽月と呼んだ少女に聞いた。
彼女は白夜 陽月。
町や学校を転々としている。
それには大きな理由があった。
それは・・・彼女が呪われ魔女と言われ、噂され、恐れられているからだ。

そんな陽月はただ歩き続ける。
少女も止まることなくただ陽月についていった。

不意に陽月は足を止める。
奥のほうに何かあるのが見えた。
だが、夜ですっかり暗くなった闇の中、それが何なのかは目を凝らしてもよく分からない。

「絆、君、あれは何だと思う?」

陽月は自分の後ろをついてくる絆という名の少女に聞いた。
結心 絆。
陽月が1ヶ月ほど前に偶然訪れた町の少女だ。
絆は陽月の唯一大切な人間だ。

「え?あそこに何かあるの?」

どうやら絆にはあそこにものがあることすらも見えないらしい。
陽月はまた再び、「それ」に向かって歩き始めた。

「ああっ、待って!」

慌てて突然また歩きだした陽月を追いかける。
しばらくすると「それ」ははっきりと見えてきた。
「それ」の目の前で2人は止まった。

「大きい・・・・・すぎるよ、これ」

「通れないな。」

絆はそれに感心しているが陽月は驚くこともなくただどうやってここを抜けるかを考えていた。
「それ」は通り抜ける抜けないなどというもの以前に次元を超えていた。

とてもつもなく大きい、「建物」だったのだ。
それもただ「とてつもなく大きい」わけではない。
その奥に広がる自然地帯全てがこの建物の所有物らしい。
一体どこまで柵で囲まれているかは分からないがとにかくどこを見ても柵に途切れはなかった。

「どうしよう・・・・というより、これって誰のお屋敷かな?」

「誰のものでも何の城でも私には関係ない。とにかく、ここを通らなければ次の場所へは行けないようだな。」

「みたいだね。で、どうやって向こう側に行くの?」

「この大きさだ。まともに交渉することも無駄だろう。」

「じゃあ、どうやって・・・・」

「はぁ・・・・・・入るとしよう」

陽月はため息をつき、仕方なさそうにつぶやいた。

「え?!この中に?」

「それ以外の方法がないのだ。」

「開けてくれるかな?」

「入れないのなら入るまでだ。」

「それって・・・つまり・・・」

陽月は大きな門の上を軽い身のこなしでよじ登る。
そして絆に手を差し伸べる。

「やっぱり・・・」

絆は不安を抱えながらもその手を取り、門をよじ登った。
その様子を浮かんでいた丸いものに見られていたとは知らずに。

門を越えて中に入る。
すると突然、大きな警報が鳴った。
慌てて巡回をしていたらしい人たちがやってきた。

「不法侵入だと仕方ないね。」

「走る。」

陽月は絆の手を取り、走った。

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