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真心文庫
\.〜 青空 〜
魔女でなくなった陽月はしばらく眠りについていた。
それをポケモンたちが静かに見守っていた。
ルナが陽月を背中に乗せる。
眠っている陽月の近くに一緒に温まるようにアウラ、アウル、ルーチェが寄り添う。
ルナの周りを守るようにスコトスとストレーガが浮遊している。
大分落ち着いた表情をしているがそれは6つの幼い少女には不似合いな疲れた顔だった。

しばらくして陽月は目を覚ました。
元気になったポケモンたちが見守っている。
起き上がり、辺りを見渡した。
陽月はポケモンたちが元気な姿と周りが黒ずんでいるのに気づいた。
陽月の右肩にアウラと左肩にアウルが乗り、頬を寄せる。
ルーチェが陽月に抱きつく。
ルナが陽月を後ろから陽月を支えている。
ストレーガが陽月の横に寄り添う。
スコトスは安心したように目を瞑った。

「どう・・・したのだ・・・?」

どうやら陽月はミレニアムの時の記憶がないようだ。
ポケモンたちが陽月から離れると陽月は立ち上がった。

「・・・・・出れる・・・のか・・・?」

陽月はそう言うと自分の荷物が置いてある棚に歩み寄る。
そして鞄をそこから降ろすと中身を確認した。
どうやらやつらは中身までは確認せずにいたようだ。
そこにはちゃんと捕獲されたときと同じものが全て入っていた。
陽月は中からあるものを取り出した。
とても綺麗な無色半透明のクリスタルがついたペンダントだ。

「姉様・・・・」

陽月はそれを両手に包み、目を瞑った。
罪悪感に押し潰されそうな表情でそのクリスタルを握る。
目を開けるとそれを自分の首にかけ、服の中に隠した。
鞄を肩にかけ、ポケモンたちと外に出ようとした。

その時だった。

扉が突然開き、大勢の人間が入ってきた。

「なっ・・・何なんだっ・・・」

どうやら町の人間たちのようだ。

「爆発音で来てみれば・・・」

男の1人が言った。
そして陽月だけを見つけると全員血の気が引いたように真っ青な顔になり、陽月を指差し、言った。

「のっ、のっ、呪われ魔女だ!!」

「本物だ!!」

「これがやったのか?!」

「恐ろしい・・・」

「本物の化け物だ!!」

「野放しにしてはダメだ!!」

「捕まえろ!!」

その言葉を聞いてポケモンたちは陽月を守ろうとした。
だが、陽月はそんなポケモンたちを止め、ボールの中に戻し、出てこれないようにし、鞄の中に入れた。
人間たちは陽月を捕獲するとカイリキーが陽月の両手を後ろで組ませ、外に連れて行く。
外は朝日が昇る前だった。

陽月は目隠しされ、手の自由を奪われ、町の人間たちにまた牢獄の中に入れられた。
陽月は一切抵抗しなかった。
ただされるままに牢獄の中に入れられ、大人しくしていた。
そこは倉島の牢獄よりはマシな場所だった。
暗闇なのは変わらないがそれでもまだマシな食事を与えられる。
町の人間たちも陽月を恐れ、無意味に罰を与えることはしなかった。









それから1年が過ぎた。
陽月は7つになった。
牢獄の中で何も期待せずにずっと過ごしていた。

そんな時。

牢獄の扉が開かれた。
食事の時間かと思ったが、言われたのは意外な言葉だった。

「出ろ。」

陽月は言われるままに立ち上がり、牢獄から出る。
乱暴に鞄を渡され、外へ連れて行かれる。
陽月は陽の光が差す、明るい外へと出た。

「とっとと出て行け!」

その一言で陽月は町の外へ出された。
陽月はトボトボと小さな身体で歩く。
町から離れたところで陽月は空を見上げた。
2年もの間
ずっとずっと見たかった青空は
とても明るく
大きく
広くて
とてもとても綺麗だった。

「青空・・・・」

陽月は2年ぶりに見た光に
青空に
涙を流した。
ただこの光を感じたくて
ただこの光を見たくて
ただただこの青空をまた見たくて
ずっとずっと耐えてきた。
ただこの青空を見たくて
ずっと・・・ずっと・・・

それから陽月は場所を移動されるようになった。
それが15歳になるまでの8年の間、ずっと同じようなことが続いた。
時にはどこかに売り渡されることもあったが、またすぐに追放されるか、移されるかをされた。

そして15歳になった年のある日。
陽月はひだまりのような少女に出会った。
少女は陽月に初めて笑顔を向けた。
陽月はその少女には心を赦した。

そこで陽月の過去の夢は終わった。

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あきゅろす。
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