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真心文庫
Y.〜 拷問 〜
陽月はまた目を覚ました。
この光も何も差してこない牢獄の中、今が朝なのか夜なのかさえ分からない。
ただ分かるのはこれは現実で自分は今のところまだ生きているということだけだった。
陽月は鎖に繋がれ、何も出来ないでいる。
今出来るのは膝を抱えて寒さを凌ぐだけだ。
一体、どれくらい時間が経っただろうか?
何も分からない。
そしてまた、扉が開いた。
入ってきたのは陽月を蹴り飛ばした男だった。
陽月はその姿を見たとたん、目を瞑り、頭を抱えた。
だが、男は黙って陽月の前に小さなパンを1つだけ置き、言った。

「食事だ」

男は陽月を見下しながらそう言った。
そして扉を閉めて、去って行く。
陽月はその唯一の食事を取り、口に含む。
食べ終わるとまた膝を抱えた。
また時間が流れる。
何もない時間が流れる。
そしてまた扉が開いた。
またあの白衣を着た中年の男だ。
男は陽月を見下しながら、歪んだ笑みで言った。

「実験の始まりだぁ」

男は陽月の綺麗な黒髪を掴み引っ張り、立たせた。
陽月は何とか立ち上がる。
鎖が解かれたがまた両手に枷をはめられる。
そして引っ張られるように外へ出た。
外はずっと暗闇の中にいた陽月には明るく感じられた。
だが、そこも不気味な色の蛍光灯が点いているだけで窓も一切存在しない。
陽月は実験椅子のような椅子に座らせられ、複雑な機械を乱暴に当てられる。
頭、腕、足、胸・・・
枷を取ることなく繋がれた陽月の目の前に出されたのは
傷ついているアウラとアウルだった。
2匹は息も絶え絶えに陽月を見て小さく鳴いた。
陽月は2匹を見て名前を叫ぶ。

「アウラ!アウル!」

すると突然、陽月は繋がれた機械から流された電撃で苦しむ。

「うっ・・・ああっ・・・!!!」

その苦しむ声を聞き、アウラとアウルはよろめきながらも立ち上がり、電撃を流している機械を操っている装置を壊そうとした。
だが、そんなアウラとアウルをあのサマヨールが攻撃する。
電撃が一旦止まり、陽月はまた叫ぶ。

「アウラっ!アウルっ!」

そしてまた電撃が流される。
小さな陽月の身体ではこの異常な強さの電撃を喰らったらまず間違いなく死ぬ。
だが、そうならないのは陽月の血に混じる、魔女の存在があったからだ。
白衣の男は歪んだ笑いで言った。

「もっと苦しめ、恨め、怒れ!そして魔女を覚醒するんだぁ、アッハハハハ」

陽月は苦しみに耐えながらアウラとアウルの名を呼び続ける。

「アウラっ・・・アウルっ・・・!!」

とても長く感じた拷問からやっと開放され、陽月はまた暗い闇の牢獄に入れられ、鎖に繋がれた。
その拷問はその日だけで3回ほどやられた。
陽月の長い長い牢獄生活の
始まりだった。

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