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真心文庫
U.〜 魔女 〜
ある日のこと。
陽月は今日はポケモンたちと家の中で過ごしていた。
1日家にいる時間が短いため、少しは中で何かをしようと思ったのだ。
陽月は本棚から少し難しい物語の本を取り出し、楽しそうに読んでいた。
まだ幼いが陽月は頭がいい。
他の子供が難しいと思うことでも陽月にはとても簡単なことなのだ。
陽月はその少し難しい、厚めの物語を読み終えると本を閉じた。
少し重そうにその本を本棚の元あった場所に戻した。
そして、他に読むものはないか本棚を見上げる。
特に目を惹く本はない。

「むぅ・・・う?」

陽月は本棚の1番上にある国語辞典ほどの大きさで少し薄めの古い黒色の本を見つけた。

「何かな・・・?」

陽月は頑張ってそれに手を伸ばす。
だが、陽月の位置からその本は大人の身長でもまだ2メートルほど上にある。
まだ小さな陽月には当然届かない距離にある。
分かっていながら手を伸ばす。
そして本棚を少し登る。
それを見ていたルナが陽月を自分の背に乗せ、その本に届く位置まで浮かんだ。

「ありがとう、ルナ」

陽月は満面の笑みでそういうとその古い黒色の本に手を伸ばした。
本を取り、ルナに床まで下りてもらう。
陽月はルナから降りると床に座った。
その本に興味を示したポケモンたちも自然と陽月の周りに集まる。
本の表紙には名前はない。
複雑な模様が彫ってあるだけだ。
陽月はポケモンたちと顔を見合わせた。
みな同じように疑問附を浮かべている。
陽月はその本を開き、読み始めた。


白夜ノ一族 永遠(とわ)ニ眠リシソノ力(ちから)
解キ放タレタ時 人ナラザルモノ 蘇ラン

月とつく者現れば 輪廻の果て 辿り着く存在
月の者 その血に交えた 存在を秘める

鳥の羽の如き 脆弱な月 それに与えられしは
光の役目 死後の世界 未練を残し 他の者を導く
人ならざる者 アイリア 道標を印す 導きの者
永遠の安らぎであることを

太陽の輝き 対を成す月 それに与えられしは
無の役目 生前の世界 怒りと共に 真の魔女 蘇る
煉獄の使者 ミレニアム 千の願い 叶えんこと
想い続けるその眠り


「その眠り・・・?」

陽月は一通り読み、疑問を浮かべたように呟いた。
アウラやアウルもお互いに顔を見合わせ少し首を傾げている。
陽月はまた本に視線を落とし、ページをめくって、読み始める。


魔の力 解き放つには 以下の条件を満たす

光 死後の世界へ旅立つ
無 怒りを感じ
魔 信じる力
法 契りを交わし
扉 力 眠りから覚める

力が与える 5つの鍵

光には 輝きを
光には 魂を
光には 記憶を
光には 6つの僕べを
光には 愛を

その力 光の役目 果たすため

力が与える 5つの鍵

無には 怒りを
無には 想いを
無には 心を
無には 自由を
無には 生を

その力 人々へ光を 存在を

愛する者へ 救いを


陽月はまたページをめくる。


光に 温かな黒髪を
光に 黄金の瞳を
光に 光の魔法を

無に 美しい白銀の髪を
無に 輝く虹の瞳を
無に 黄金の魔法を

その姿 与えよう その力 与えよう


1枚、また1枚とページをめくっていく。
今度は日記のような内容だ。


白夜の家は千年にも及ぶ
魔術師の家系。
その血には
眠れる存在を宿す。
太古より
嫌われ、疎まれ、恨まれて
輪廻の果て
その存在を残してきた。
魔を司る者には
信じる力と
人を想う心と
「愛」を宿す。
光と無は
2人の血の繋がる少女たちへ
その力を秘める。
いつか目覚めるその日まで
眠りについていることだろう。
いつか目覚めるその日まで
安らかであれ 我が最愛の娘たち


ページをめくっていく。


ポケモンたちと
戯れる 2人の少女は
不思議な存在。
1人は光の
1人は無の
存在だ。
我が力で生み出した最愛の娘たち。
だが、そろそろ我らは消えてなくなる。
そろそろ魔術の幕を閉じる。
その前にしなければ。
その前に救わなければ。
許してほしい、娘たちよ。
私はもう逝く。
その前にお前たちを
転生させることを
許してくれ。
いつか現れる
2人の血の繋がる少女たちの中で
どうか安らかに。


まためくる。


私が作り出した
2つの存在。
光は姉
無は妹
人ならざる者たち。
それでも私のかわいい娘。
最愛の娘。
愛のある
心のある
魂の存在。
いつになるかは分からない
だが、願おう。
いつか
2つの力が
幸せになることを。
永遠に会うことない
アイリア ミレニアム―。


最後のページについた。
このページからは手紙のようになっている。


光よ。

あなたは人々を導く

道標となりなさい。

人の全てを助けるのではなく

その人の進みたい道へ

光で道を照らし

その人の幸せへの道標へ

辿り着けるように

見守り続けるのです。

愛する誰かのために

見守り続けるのです。

それがあなたの

輪廻の果て

与えられる最後の役目

愛する者のために

幸せを願い

真の光となれ―


最後のページ。


無よ。

あなたの怒りは

決して憎むためのものではありません。

あなたの怒りは

人を救うための怒り。

それを忘れないように。

そしてあなたは

人を愛しなさい。

そして赦されるのであれば

愛されなさい。

幾千の願いを叶え

全ての人に祝福を

あなたの命は

人の幸せを

愛を

感じたときに

初めて生み出される。

無よ。

あなたには

信じる力と

人を想う心が

ちゃんとありますよ。

誰よりも何よりも

強く持っています。

あなたに

祝福あれ―


陽月は読み終わると本を閉じた。
そして少しの間、窓の外の青く晴れた空を見上げた。

「何だか・・・不思議・・・」

陽月は少し寂しそうに呟いた。
スコトスたちは本を読んでから目を瞑り、静かにしていた。
まるで何かを悟ったように。
陽月は立ち上がり、またルナの力を借りて、本をもとあった場所に戻した。
ルナから降りて、また床に座る。
そしてルナに寄りかかる。
アウラとアウルもルナの背に乗り、身体を丸める。
ルーチェは陽月の隣に座り込む。
スコトスとストレーガも陽月のまわりで休むように座っていた。

「魔女・・・・」

陽月はそう呟くと目を瞑った。
そして少しして小さな寝息をたてた。
ポケモンたちもそれに釣られたように眠り始める。
白夜家に語り継がれるもの。
魔女の存在。
今、光と無は
どうしているだろうか?

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あきゅろす。
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