[携帯モード] [URL送信]

真心文庫
ひだまりの少女
私は誰かの声をかけられ目を覚ました。

「あなた、大丈夫?ここで寝てると風邪引いちゃうよ?」

うっすらと開けた目から見えたのは1人、優しい目をした少女だった。



ここは木の実がいっぱい採れる自然豊かな森。
あたしの大好きな森。
ポケモンたちの鳴き声や自然の音、ここを通る風、太陽の輝き、全部が大好き。

中でもお気に入りなのは奥のほうにある湖。
そこには1本、大きくてうたたねするにはとても気持ちのいい木が生えてるの。
そこに行くと嫌なことが忘れられるから。

あたしはいつものようにその湖に向かっていた。
ゆっくりと風を感じながら。
その湖では誰にも見つからないからどんなに長くいても大丈夫。
それにあたしには家族がいないから怒られないから。
やっと湖に着いたよ。
いつもの木の下で少し寝ようかな。
あれ・・・?

「誰・・・?」

その木にはもう誰かがいて眠っていた。
お昼寝にしてはすごく深い眠りについてるみたいで起きる気がしないかな。

黒いワンピースを着ていて髪も長くて黒い色。

鞄を枕にして寝てる。

もしかして、昨日からずっとこうなのかな?
身体、大丈夫かな?風邪引いたりしないかな?
心配だよ・・・。

でも・・・とってもきれいな子。
あたしと同じくらいなのにとてもきれいな子。
寝てても大人っぽいって分かるけど小さな子供みたいな寝顔。
かわいいな・・・かわいいけど、やっぱりどこか悲しそう。
この子、どんな子なのかな?

何だろう・・・この子を見ているととても悲しい気持ちになるけど
同じようにとても温かくて優しくて、1人じゃないって言う気持ちになれる。
初めて会っただけで、しかも話したこともないし、そもそも寝てるのを見ているだけだけど
ずっと前からの友達みたいな気分。

やっぱり、今日のあたし変だな。
だってこんなこと、絶対に他人には感じることないのに。
でも、この子にだけは感じる。
何だか、何かが変わる気がする。
あたしは目を瞑ってみる。
少し気持ちを落ち着かせよう。

あれ・・・?何・・・?
急に目の前が眩しくて・・・。


『あなたはどうする?』

「誰?」

『我の名はアイリア。道標へと導く者なり・・・。』

「道標?」

『どうする?この少女をあなたはどうする?』

「どうするって?」

『殺すか?それとも生かすか?』

「なっ!何で殺さないといけないの!」

『この少女は自分の呪われた運命と戦っておる。きっとこの少女は自分の未練を断ち切ったあと死を選ぶだろう。』

「な、何で?」

『それがこの子の選んだ道だから・・・』

「そんなのダメ!絶対ダメ!何でか分かんないけどダメだよ!」

『それはあなたの決めることではない。この子が決めること。』

「どうすれば変わるの?どうすればいいの?」

『あなたに出来るか?』

「え?」

『あなたにこの子を変えられるか?この子の運命を変えられるか?この子の死を・・・生き方を・・・』

「そんなの・・・そんなの分かんないよ・・・分かんないけど・・・この子が苦しんでることは分かる。
悲しんでることは分かるよ。本当は死ぬことが怖いことも、生きたがってることも、分かるよ。」

『この子は哀れな子。人に疎まれ憎まれ呪われる、哀れで傷深き子・・・それでも変えられるか?』

「この子が誰で何なのかはあたしには分からない。変えられるかも分からない。
でも、変えてあげたい。この子の未来、変えてあげたい。」

『出来るか?何があっても向き合えるか?受け入れられるか?この子の全てを・・・未来を・・・傷を・・・本当の心を・・・』

「出来るよ。向き合う。全部受け止めてあげる。あたしは絶対にこの子を1人にはしないよ。
この子はきっとたくさんの悲しいこと、辛いことを味わってるはずだから。
あたしには分かるの。この子がどんな気持ちなのか分かるの。絶対に未来を変えるよ。だってこの子ははじめてあたしが信じることの出来る子だから。」

『・・・よろしい。あなたの道標まで導くのが我の役目。導いてやろうぞ。この子の運命を変えるための道標まで、ひだまりの少女よ』


気がついたらあたしは何があったのか覚えてなかった。
目を瞑っていた時間が長く感じたけど実際はほんの少しの時間だったみたい。
さっき、何があったのかな?

あ、そうだ。
このままにしたらダメだよね。
起こしてあげないと。

「あなた、大丈夫?ここで寝てると風邪引いちゃうよ?」

目を覚ました。
これからこの子とは仲良くなれる気がする。
あたしはこの子の・・・友達になりたいな。

[back][next]

3/20ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!