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真心文庫
呪われ魔女
一体、どれくらい走っているのだろうか?
全く・・・こんな夜中に余程暇な人間たちなのだな。

「おいっ、いたぞ!」

「魔女だ!呪われ魔女だ!」

呪われ魔女・・・か。
否定はしない。
なぜなら私には本当に魔女の血がごく微量だが流れているからだ。
古代より昔から魔女は嫌われる存在が多かった。
それもそうだろう。
人間なのか化け物なのかも分からないのだからな。
だが何より怖がられたのはどんなポケモンたちとも友達になれることだった。
どんな凶暴なポケモンでも沈めることができた。

やろうと思えば世界規模の戦争だって起こせただろう。

だが、魔女はそんなことを絶対にしない。
してしまってはこの世界のおもしろいものがなくなってしまうではないか。
おもしろいものがなくなり、退屈になれば私だったら確実に死ぬだろう。
退屈は魔女を殺す・・・その通りだ。

それが分からない人間たちほど面倒なものはない。
こちらは自分たちが死なないために今まで戦争も争いも起こさずにしてやったのだ。
別に感謝されたくないが追い掛け回される筋合いもない。
私は誰にも危害は加えていないのだからな。
まあ・・・危害を加えていないと言ったら嘘になるのだろうが・・・。

「やっと追いついたぞ!」

「もう逃げられん!」

ちっ・・・捕まってしまった。
全くしつこい奴らだ。

「さっさとこの村から出て行け!」

「お前がいると不幸が訪れるんだ!さっさと出て行け!」

「そうだそうだ!」

「出て行け!」

何人もの村人が私に松明につけた火を向け、崖の淵へと追い込む。
もう逃げ場はない。
闇に紛れるように着た黒服もあまり役に立たなかったな。
このまま落ちて行くのも悪くないか。

「さっさと出て行け!」

うるさい連中だ。
どうせここには長くいるつもりもなかった。
丁度いい。
今すぐにでも出て行ってやろうではないか。
私はやつらに冷たい笑顔を向け、崖から飛び降りた。

「魔女が!魔女が!」

「魔女が落ちたぞ!」

「自分から飛び降りたぞ!」

上でそんなことを言っているのが聞こえる。
まあ、無理もないか。
自分から飛び降りるなど考えもしていなかっただろうからな。
だが・・・うむ。
まず、このまま地上に叩きつけられれば私は確実にあの世行きだな。
困ったものだ。
まあ・・・それもいいかもな。
この世界に未練などない。

スー・・・

ん?
何かが私を受け止めた。
落下速度が遅くなる。
ゆっくりと目を開け、正体を知る。

「スコトス・・・」

私のダークライ・・・スコトス。
お前だったか。
スコトスは私をゆっくりと地上へ連れて行き、私は地上に足をついた。

「スコトス、これは君が勝手にしたことか?それとも私がいないと困るからか?」

スコトスはうなずきも鳴き声もしなかった。

「これは君の意思か?」

スコトスは小さくうなずく。
そうか・・・仕方ないか。

この世界に未練はない。
だが、あえて言うなら私のポケモンたちを置いていくことだな。
こいつらは私がいなければ生きていけない。
独り立ち出来るようになれば心置きなく死を迎えることが出来るのだが・・・それまで待つのもいいか。
もう少し、この世界にいるのもいいかもな。

「まあ、いい。行こう。」

スコトスはうなずき、私の後を追う。
しばらく歩いていると森の中に出た。
さらに奥へ進む。
月のよく見える湖に出た。
1本、よく眠れそうな木があった。

「今日はここで休もう。明日、森を抜ける。」

スコトスはうなずき、自分から私の鞄の中にあるモンスターボールの中へ戻った。
いきなりだったからな。
着替え1枚とポケモンたち、少しの財産しか持ってくることが出来なかった。
まあ、これくらいあれば十分だ。

木に背中を預け、月を見上げる。
私はゆっくりと目を閉じ、これまでの村を思い返した。

生まれ育った村・・・5歳の頃両親がいなくなってから私1人、それまで何も言わなかった村人たちが私を「呪われ魔女」として恐れ、違う村へ移した。
呪われとついた理由は私のせいで両親が亡くなったことにある。

私の村は海の近くにあり、ある日、大きな嵐がやってきた。
特に私の家は海岸近くの丘。
大きな津波がくれば大変だ。
風は大きく家々を揺らし、雨は強く、黒い雲は渦を巻き、海の波は大きくうなっていた。
私は外にいたポケモンたちを中へ入れるために外へ出ようとした。
当然、両親は止めようとしたがそれを聞かずに外へ行き、ポケモンたちを避難させた。

その時だった。

大きな津波と雷が私に向かっていた。
だが、水は被ったものの雷はいつまで経っても私に落ちては来なかった。

両親が・・・私を庇ったのだ。
津波で水を被った両親へ雷が落ち、見事に感電し、そのまま逝ってしまったのだ。

私へ向かったはずの災害は他の人間に当たった。
それが呪われと呼ばれる由縁だ。
魔女と言う呪われた者・・・それが私。
それが噂で広まったのか村から村へ移ってもすぐにまた違う場所へ移され、今回は「魔女狩り」になったわけだ。

学校にも行かせられたが退屈で死にそうだった。
皆なぜ簡単な問題も難しいとでも言わんばかりの顔でするのか。
あんな問題も10秒あればすぐに答えが見つかるはずだ。
理解できない。

そろそろ眠くなってきたな・・・・。
もう寝よう。
魔女にも・・・休息は・・・必要・・・なの・・・だ・・・。


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