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真心文庫
助けてください
一体どれほどの時が過ぎたのだろうか。

テルミは血や、消化液などが飛び散る濡れた床で目を覚ました。

あの事を夢だと信じたかったが、腹の痛みが天地達に無理矢理暴かれた証のように思えて酷く生々しく感じた。
その痛みのせいで研究員達にされた行為が現実のものだと改めて知らされる。

そして行為の内容も。

「うっ…あっ… ひづ…きぃ…」

テルミは恐怖と痛みに涙を溢しながら愛する人の名を呼んだ。
別にそうすることで助けが来るわけがないことはわかっている。
ただ、ここで陽月の名を呼ばなかったら自分を失ってしまうと思ったのだ。


実際に行為の最中、テルミは何度も自分を失いかけた。
それほどのことだったのだ。

テルミは吐き出す方法もわからぬこの恐怖の感情を涙に込め、目が腫れるほど涙を流し愛する人の名を呼び続けた。

「陽月…ひづ…きぃ…ああっ…陽月っ…ああぅ、陽月っっ…!!!ああ゛っぁあっ!!」


喉が枯れるほど、テルミは陽月の名を呼び続けた。
期待などしていない。ただただ、陽月の名を呼ぶことで自我を保ち、陽月の笑顔を思いだし、少しでも心が休まればそれでよかった。
他は何も望まなかった。


その時、牢獄の扉が音をあげた。

テルミの思考は停止し、背筋を凍らせる。


そしてテルミの耳に、今一番聞きたくなかった声が響く。


「起きたかぁ…テルミぃ…」

天地だ。

天地はねっとりとした笑みを浮かべながら、枷を付けられ、動くことのできないテルミの、腹をヤワヤワと撫でまわす。


テルミの脳裏に行為の光景が蘇る。
声が痛みが音が笑いが臭いが

それらを思い出すのは今のテルミには辛すぎた。
天地の笑みに、脅えるように座りながら後退りし 瞳を潤ませながらいやいやと首を左右に振る。

そして市原が追うように手を動かした瞬間、
テルミは涙を溢しながら、胃に入った物をすべて吐き出した。

「どうしたぁ。嘔吐するほど俺が嫌いかぁ。アレをした仲だぁ、簡単な関係じゃねぇよなあ?テルミぃ…」

「いやっ…だ……やめ……」

「嫌だなんて言える立場かぁ?飼育物は主人に従わなきゃなんねえんだぞぉ?

じゃあテルミぃ、今日はお前をキレイにしてやるよ」

天地はそう言うと、テルミの首の枷を引っ張り、牢獄から引きずり出す。
テルミは引きずられながら息絶え絶えに呼吸をする。

そして牢獄からでる直前、荒い息の合間にはっきりと呟いた。



「陽月…」



---


テルミが連れてこられた場所はどこかで見たような緑の光に包まれている場所だった。
そして部屋の真ん中に上から垂れ下がる鎖と手枷がある。

天地は部屋の真ん中にテルミを連れてくると、乱暴な手つきで手枷を、手枷の上に取り付けた。

「い゛っあ゛っ…ぎっっあ…」

「静かにしろ。今から愉しいコトすんだからなぁ」

天地はヘラヘラと笑いながら巨大なペンチを構える。
そして反対の手でテルミの美しかった金の髮を掴み、上に引っ張り上げた。
そして顔も無理矢理上に上がってしまう。

「始めるかぁ」


天地はペンチをテルミの足に近づける。
そして思いっきり


爪を剥ぎ取った。


「い゛あ゛あぁっっっ!!!!!」


血がジワジワと床に流れる様子を見、テルミの叫びを聴き、天地は興奮のあまり荒く息をする。

「ピアノみたいだなぁ。いい声で啼くなぁ、テルミぃ」

そして新しい音色(声)を聴きたいがために、天地は次の爪にもペンチを近づけた。

「ぎあっっあ゛ああ゛ぁっ!!!!!!」


そしてテルミのすべての爪が無くなるまで、天地は行為を続けた。

テルミの苦しむ声が聴きたいためだけの、彼にとっての



遊びだった。



---

「無くなっちまったなぁ」

天地はもの足りなさそうに言うと、ペンチをテルミの額に投げ捨てた。
当たった箇所から血が溢れ、テルミの左目を開けなくさせる。

テルミに叫ぶ気力はもう無かった。

天地は一度身体すべての枷を外させた。
テルミは外させたとたんに血に濡れた床に倒れこみ、水音を鳴らす。

天地は愉しそうにそんなテルミを見ながら、テルミの身体を背負った。
そしてにやつきながら言う。


「テルミぃ…」



「本番はこれからだぁ」



ここでテルミの思考は途切れた。

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