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真心文庫
残酷なる遊戯
冷たい床

嫌な臭いが充満する湿った部屋

光の差さない暗闇



その場所にテルミは倒れていた。



「…ぁ…」

テルミは目を開けてみようとするが、何度瞬きしても暗いまま。部屋の暗さだけではない。
目を布で隠されているのだ。しかもご丁寧に固結びで。

毒は抜けたらしく、身体は動くはずだが身体が異常に重い。
それもそのはず。目隠しされたテルミは見ることは出来ないが、彼の身体の至るところに枷を付けられ、重りを付けられている。

だが目が見えない今、身体に付けられている物の正体さえテルミには知り得ないこと。
何もかも見えないという状態がテルミの全身に恐怖を植え付ける。


彼が人間となったとき、副作用で視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚すべてを失った。

あれも完全に閉ざされた地獄のような世界だった。
だが今と違うのは他に人間やポケモンが居てくれたこと。
ラプラスがテレパシーで会話相手になってくれ、触覚を取り戻してからはαの存在を確認でき、とても安心したことを今でも鮮明に覚えている。


でも今は独りだ。


その時。
テルミの耳に扉が開く嫌な音が響いた。
そして同時に何人かの足音が響く。
足音がするので少なくともミィやハチではない。
彼らが足音を残すなんていうヘマを起こさないことはテルミもよくわかっている。

ならば誰なのかと思考を凝らしていると、入ってきた存在の低いネットリとした声が聞こえてきた。

「ようやくお目覚めかぁ…やはり綺麗な身体だぁ」

「これは暴き概がありそうだねぇ…くへへへへ…」

いやらしい声の持ち主は間違いなく男だ。
そしていきなりテルミの腰をヤワヤワと撫でてきた。

「あっ…」

いきなりもたらされた手の動きにテルミは思わず声をあげてしまった。

「いい声と身体だなぁ…」

「早く解剖してえなぁ」

テルミは言葉の意味がわからず頭の中で意味を考えていたが、その時間も男たちに邪魔をされた。

テルミの身体が恐ろしい勢いで引き寄せられ、鉄のような物体に激突したのだ。
余りにも強い力だったため、テルミのこめかみから血が滴り落ちた。

「ぐっあ゛…ぅ」

テルミの呻き声でさえも男たちにはご馳走らしく、いやらしい顔を更に歪んだ笑顔に変化させた。

そして横にいるレアコイルの磁石に吸い寄せられた、鉄の枷が大量に付けられたテルミを引きずり始めた。
地面との摩擦で熱が発生し、テルミの身体のあちらこちらが軽い火傷を負う。

男たちは、何度も何度も痛さに声をあげるテルミの声に背中をゾクゾクとさせながら目的の場所へと引き摺っていった。


---


「外せぇ」

さっきの人物とは違う、だが同じ欲望を込めた声と共にテルミの目隠しが外された。

「…っ!!」

テルミは目の前の男達を見た瞬間、恐ろしい感情を感じとり思わず目を見開いた。


目の前にいる10人ほどの中年の白衣を着た男達が全員テルミにネットリとした笑顔と視線を向けていたのだ。
テルミは思わず息を呑む。

「改造強化人間育成研究完成品のNo.7だなぁ?」

「さすがアフロディーテ嬢。いい仕事をする」

「早くこいつのキレイなあかぁい中身を取り出してぇなあ…くへへへへ…」

テルミは何のことかわからず、純粋に気になったことを質問する。

「母上を…知っているのか?」

その質問に研究員達は笑顔でかえす。歪んだ歪んだ笑顔で。

「ああ…モチロン。あれほど大きな計画知らないはずがないねぇ」

「それとなぁ、No.7。お前の大切な白夜嬢の魔女研究の第一人者。倉島とも知り合いだ。昔ちょっと一緒に働いていたもんでねぇ」


倉島


その名を聞いた瞬間にテルミの表情が劇的に変化する。

「…あの蚤虫のか…。」

「アイツは腕は確かだが俺達の好きなコトには興味がなかったからなぁ…。
魔゙女"研究なんていう気味悪いことに手を出すから蒸発する」


「陽月の何を貴様らはわかっている。彼女の味わった苦しみの何を貴様らは知っているというのだ。気味悪い程度で片付けるな。」


テルミは明らかに不利な立場にもかかわらず、強気な口調で研究員達に言い放った。




だがそれがいけなかった。



研究員達は互いに顔を見合せ、再び歪んだ笑顔を造り出す。

そしてその中の一人がにやつきながら、乱暴な手つきでテルミの美しい金の長髪を掴みあげた。

「いっ…!」

「痛いだ?貴様だぁ?No.7…いや、テルミぃ…お前は俺達の飼育物(ペット)だ。飼育物がものを言ったり、主人に歯向かったらどうなるかわかってんだろうなぁ…」



「ちゃんと躾しないとなぁ…。なあ。テルミぃ?」



研究員はテルミの髪を掴んだままその身体を壁に叩きつけた。

「市原ぁ…キリキザン連れて来い」

「はいよぉ」

市原は舌舐めずりをしながら、檻の中に繋がれていたキリキザンを無理矢理連れ出した。
弱ったキリキザンは立つことさえままならないらしく、死んだような目をしている。

市原は引きずりだす際に隣に立て掛けていた彼お気に入りのオモチャを手にした。

「市原ぁ…」



「切れ」



その指示を聞いた市原はニタリと笑い、彼お気に入りのオモチャの電源を入れた。

部屋にヴゥゥンという機械音が鳴り響く。
市原はそれをバイオリンの音色に聞き惚れるが如く、うっとりと聴いていた。

そして手にした彼お気に入りの



チェンソーを



キリキザンの腕に振り降ろした。






---

「まだ片方鎌が残っている。生かしておけ。」

「はいよぉ」

市原は顔と白衣に飛び散ったキリキザンの血を満足そうに眺めながら、切断された傷口を押さえながら苦しむキリキザンを応急措置もせずに再び檻に放り込んだ。このまま苦しむならばいっそのこと殺したほうがキリキザンも幸せだっただろう。

一連の出来事を目の前で行われたテルミは絶望的な表情で壁に押さえつけられていた。
言葉は口から出なかった。

「はいよぉ、天地(あまち)。」

市原は血を舐めとりながらキリキザンの鎌を天地に渡した。
天地はそれを受けとると、テルミの腕を無理矢理上げさせた。
脇が露になるような体位。
天地は上げさせた手のひらを重ね合わせた。
だが両方とも重り付きの枷が取り付けられているので手首がギシギシとなり、腕が引きちぎれるような痛みがテルミを襲う。

「い゛…あぁう…ぐっあ」

頑張って声を押し殺すが意に反してそれはテルミの口から吐き出される。

天地はそんなテルミを名画を見るようにじっくりと鑑賞する。
そしてその名画を更に美しくするため、絵に筆を入れた。



重ねたテルミの手にキリキザンの鎌を突き刺すという筆を。



「あ゛あっぎぅああっ!!!!」

テルミは見ることの出来ない場所に突き立てられたそれの痛みに声を上げる。
しかも壁ごと貫通しているため、重りのせいで身体が徐々にずり落ちていく。

そのせいで傷口は更に広がり、肉も神経もすべて切り裂いていく。


そしてついにテルミは鎌から解放された。


刺された箇所から上すべてを切り裂き、鎌の通る道を作るという手段だった。

ようやく痛みから解放されたテルミは痛さの余り、涙を溢した。

「ひっぁっ…ぐっぅ…」

「イイ声だぁ…解剖しがいがありそうだなぁテルミぃ」

「だけどその前に手当てしてやるよ…。この天地様直々になぁ。光栄に思え。」

天地はドロリとした笑みを浮かべながら市原に命じた。

「エアムード連れて来い」

「はいよぉ」

市原はキリキザンの横に入っているエアムードを無理矢理引きずり出した。
同じく、ボロボロの状態だ。

「市原ぁ…」



「焼け」



市原はそれをきくと、チェンソーをいじくり始めた。
そしてチェンソーを火炎放射機に変形させた。
そして噴き出した炎をエアムードに向けた。


鋼の身体が融け始め、エアムードは叫ぶ間もないまま息を引き取った。


市原はエアムードの羽根の中で最も熱く、鋭いものを柄の長いペンチで引っこ抜いた。

「はいよぉ」

ペンチごと渡されたそれ。テルミは現実とは思えない出来事に涙を流すことしか出来なかった。

「じゃあオペを始めるかぁ」

天地は言いながら、赤くなるまで熱せられた鋼の羽根を
テルミの傷口に触れさせた。


「あ゛あっあぁ゛あっっっ!!!!!!!ぐあ゛あぁ゛っんあっっっっ!!!!!!!!」


皮膚が

肉が

筋肉が

骨が

神経が


焼け爛れる



血が噴き出し、テルミの髪を赤く染め上げる。



だが最後には血さえも止まるほど皮膚を焼けただらせたため、結果的に傷口は綴じられた。

だが同時にテルミの意識も綴じられた。


「そろそろかぁ?もう抑えられねぇよぉ」

そう言い、市原は白衣をせっせと脱ぎ始めた。
それに対し天地はテルミの寝着のボタンを上から順番に外しだす。

そして徐々に見え始めるテルミの白い肌に喉を鳴らせた。


「儀式の時間だぁ…」




そしてテルミは男たちに汚された。
麻酔も無しにテルミの柔らかい肉を切り裂き、取っても支障のない臓器を取り出し、
叫ぶテルミの声に興奮しながら暴いた箇所をキレイに縫い直した。
必ず死ぬ所を、なんとか生き永らえたのはカノンのアフロディーテの血がごく微量流れていたのがあるからだろうか。

いずれにせよ、テルミは痛みのあまり意識を手放した。

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