真心文庫
送り込まれた刺客達
蒼炎の館 最上階
生徒会長であるテルミの為に用意された一際広い、白を基調とした部屋。
その部屋の主は静かな寝息をたてながら眠りについていた。
その部屋にミィは現れた。
ミィはさっきまでの煩さが嘘のように、無音で窓を破壊し中に入り込んだ。
そしてベッドで眠るテルミの姿を見つけたとたん笑顔に変わった。
無音でベッドに近付き、無言でベッドに乗り、恐ろしいスピードで隠し持っていたスピアーの毒針を取りだしテルミの喉元目掛けて降りおろした。
だが
「あ〜よかったあ!もし殺しちゃってたらおじさん達にオシオキされちゃってたよ!!ナナおっはよぉ!!」
その針を持った腕を直前に目を開いたテルミに掴まれたのだ。
かなりの腕力と強い目のため、このままの状態を保つのは無意味だと考え、ミィは一旦距離をとるためぴょんと跳ね、ベッドから飛び降りた。
テルミもまた隙を突かれないように、ばっと起き上がる。
「誰だ貴様。」
「そっか。ナナはボクのこと忘れちゃったかあ。まあナナからしたらボクらなんて不良品程度にしか思ってないだろうから憶えてないのかもねえ。
…でもさぁ、ボクらはこの十七年間、一度たりともナナを忘れたことはないよぉ。
ずっとずっと
殺してやりたかった。」
その言葉を聞いたテルミは目を見開いた。
副作用はすでに完治しているため、どちらの目もだ。
そして恐る恐る顔を見た。
さっきは光がなかったため全く見えなかったその顔。
目が暗闇に慣れたため、ようやくその顔が拝めた。
テルミと全く同じ顔
「No.31…!!」
「違う。ボクらはもうそんな番号しか付けてもらえない存在じゃないよぉ…?
ミィっていう名前が有るんだよ?ナナ。」
ミィはそう言うと手を出した。
「ナナ。一緒に来てぇ…。おじさん達に頼まれてるからボクナナのこと殺したくても殺せないんだからぁ…」
「何故…僕を…」
「知らないよぉ。中までぐちゃぐちゃにしたいんじゃなぁい?ボクらも拾われたときサれたもん。」
ミィはその時の事を思い出したらしく、痛そうに少し呻いた。
だが純粋なテルミがその意味をわかるはずもなく、解剖でもされるのだろうと自分の中で納得し
個人的に気になった点をミィに訊いた。
「ボクら…だと?」
「だよぉ。ハチ兄ぃはみちるってやつ、イロハはαっていうやつのトコ行ってる。」
「No.8とNo.168…」
テルミが思い出すようにした瞬間だった。
ミィは目にも止まらぬスピードでテルミのベッドに飛び乗った。
そして耳元で囁いた。
「ボクの能力知ってるぅ?他人のね、記憶を観る能力だよぉ♪」
そう言うとテルミの耳に自分の口を押し当てた。そして思いっきり『吸った』
「ひっ…ぁ!!」
テルミは驚き、声をあげたが、何故か逃げることが出来なかった。
ミィの思うがままにされ、記憶を除き見られる。
---
「ごっちそうさまあっ!!」
ミィが離れた。だがテルミはうごけないでいる。
よほど強く吸われたのだろう。耳が少し赤くなっている。
「へぇ〜ナナって彼女居たんだあ!!初耳ぃ〜!じゃあさナナの彼女ボクが奪ったら ナナもしかして泣いちゃう?泣いちゃうならボク頑張っちゃおうかなあ♪キャハハハ!!」
「陽月に手を出すなっ…!!」
「どーせナナはおじさん達のモノになっちゃうんだからさ彼女独りぼっちだよぉ?
ボク優しいと思うけどお?」
「黙れっ…陽月に手を出せばっ……あっ…!!!」
引き下がらないテルミが気に食わなかったらしく、ミィは更に隠し持っていたドラピオンの毒をテルミの首筋に突き刺した。
たちまち毒が全身に廻り、テルミは意識を失う。
ミィは動けなくなったテルミを担ぎ上げ、自分が破壊した窓に向かって言った。
「終わったからみんな帰ろうよ」
と。
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