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真心文庫
8人となった炎精組
炎精組では、絆がしばらく眠っていた爽を無理矢理起こし、自己紹介をさせた。

「あー・・・えっと・・・まあ、醐大 爽だ。よろしく。」

「なんでどもるんだよお前・・・」

隣で呆れる明雄。戦っていたと思ったら、終わったときには寝るわで
第一印象よりもツッコミどころがある奴だと思ったのか、遠慮なくツッコんだ。

「あー・・・んー・・・気にすんな。」

爽は笑って軽く流す。
絆はそんな爽に苦笑いして、足りない分を説明した。

「えっとね、爽くん、すっごい居眠り体質なの。丸2日寝ないと元気でないって言うね。
爽くんはあたしと同じ町の出身で、幼馴染なんだよ。」

絆は途中から普通に笑って嬉しそうに説明した。
その紹介を受け、麗はどこか楽しそうに爽に言う。

「あら、幼馴染なのね。どうりで仲いいと思ったわ〜 付き合ってたりするの?」

絆はその言葉で顔を赤くさせ、かなり動揺している。

「え、あ、いや、あの、その、えっとね、あたしと爽くんは、その、えっと・・・」

「んー?俺は絆のこと好きだが何か?」

「意外とはっきり言うんだね;」

みちるも思わずツッコんだ。ここまではっきり言われては逆に、聞いているほうが恥ずかしくなる。
絆はさらに顔を赤くさせ、何も言えずにいたが、俯いて言った。

「・・・あたしも爽くんのこと好きだよ?えっと・・・でも、付き合うっていう感覚じゃないかな?かな??」

爽はそんな絆を面白そうに笑ってみていた。
そしてポンッと絆の頭に手を乗せた。

「ま、そういうことだな。」

絆は顔を上げ、太陽のように明るく笑った。
そんな絆を見て、みちるも笑顔で言った。

「恋する女の子って本当にかわいいね、絆ちゃん♪」

以前に、二人で陽月のことをかわいいといっていたときのように
みちるは笑顔で絆にそういった。

「みちるちゃんも人のこと言えないよ?ね♪」

頭から爽の手が離れた絆は笑顔でみちるのほうを向いた。
みちるは一瞬絆の言っている意味が分からなかったが、どっかの誰かさんの顔を見た後
顔を火照らせ、思わず声をあらげた。

「えっ、あっ、はあっ?!いや、私はっ!!」

言葉になっていない。

「まあまあ。あ、そうだ。爽くん、紹介するね。この子は藍崎みちるちゃん。で、こっちのお姉さんみたいで綺麗な人は妃 麗さん。
こっちの可愛くて優しい女の子が、奏さん。さっき出て行った人は藍崎瀬南くん。みちるちゃんの双子の弟くんだよ。」

「みちるです、よろしく!いつかバトルしてよね!」

「麗よ。お姉さんだと思って気軽に色々言っていいわよ♪とくに恋愛事情はね」

「初めまして、奏といいます。お暇があればバトルの相手してくださると私の子達も喜ぶと思います。」

「ああ、よろしく。俺、ほとんど寝てると思うが、気にすんな。・・・ところでよ・・・」

爽は何かを思い出したように明雄を見た。

「・・・藍崎と明雄って・・・・付き合ってんのk」

「ざ、ざけんじゃねぇっ!!黙ってやがれ!!」

爽は言ってる途中で止められ、心の中で思った。

「(・・・つまり付き合ってんだな。)」

眠いのにも関わらず、爽は意外と鋭い。
否定をしていないところも考えるとそうなったのだろう。
爽はあくびをして、背伸びをした。

「ま、何でもいいけどな・・・。」

「な、何でもいいなら訊くんじゃねぇ・・・くそっ・・・」

「んじゃ、そろそろ俺はもう一眠r」

爽が言いかけたところで教室の扉が開いた。
そこに立っていたのは陽月だ。

「・・・爽、君、寝る前にバトルの結果はどうだったか、訊かせてもらう。」

「陽月ちゃん、おかえり。」

絆は陽月に笑顔を向けてそう言った。
そして、陽月に気づいた女性陣がまたもやテンションを上げる。

「陽月ちゃんっ!!ひさしぶりー!!」

「あら、また大人びてきたわね〜(特に体が)」

「陽月ちゃんおひさしぶりです!」

陽月は微笑み、教室に入った。

「しばらくだった。みちる、奏、麗。明雄もな。」

「おう。ちなみにバトルの結果はどっかの誰かとのバトルと同じような結果だったぜ?」

陽月はしばらく爽のほうを見ていた。
爽は頭をかいて、あくびをする。

「・・・君は1度でも誰かに勝ったことがないのか。」

「るっせーよ。町の人間には全員勝ったことあるし。あとはお前に勝つ。」

「3度目の正直・・・というやつか。」

「そうだな。」

爽は少し呆れ気味に笑って答えた。
陽月は少しため息をつき、扉のほうに向かって言った。

「引き分けだそうだ。爽は入園できるのか?」

その声に、聞き覚えのある透き通るような綺麗な声が答えた。

「まあ、彼と引き分けならば実力は確かだろう。ふふふっ」

そして、声の主である会長が、炎精組に入ってきた。
そして爽のほうに歩を進めると、袋に入ったものを手渡した。
爽は差し出されたものを思わず受け取った。

「これは・・・?」

「我が学園の由緒ある制服だ。君にはこれに袖を通す資格がある。大切にしたまえ」

「やっぱ制服じゃないとダメか・・・。」

爽は少し苦笑いを浮かべて制服を見た。
そして爽やかな笑顔を会長に向けた。

「あざーす」

会長はそんな彼にニコリと笑った。
そして、何かを思い出したのか絆に声をかけた。

「絆、先ほどの件だが時間があるのならそれをみせてはくれないか?」

絆は少し前の会話を思い出し、楽しそうな嬉しそうな、明るく元気な笑顔を向けた。

「はいっ!!」

絆は背負っていた鞄を自分の前に持ってきて、中を漁り始めた。
そして目当てのものが見つかったらしく、それを取り出す。
絆が取り出したのは少し厚めの封筒だった。

「これです。よかったらどうぞ。」

絆はその封筒をニコニコしながら会長に渡した。

「これは?」

「秘密です。見れば分かります。ただ・・・」

絆は小声になって陽月を横目で気にしながら言った。

「陽月ちゃんには絶対に見られないでください。」

その発言に疑問符を頭に浮かべたが、とくに理由は聞かずにその封筒をブレザーのポケットに入れた。

「そうしよう。」

絆は安心したように微笑んだ。
会長は頷くと、ドアのほうに向かった。そして

「では、僕はここで失礼する。」

と言い残し、炎精組から去っていった。

陽月はその後姿を少しの間見送った後、訊いた。

「・・・瀬南がいないようだが?」

「あーあいつなら『うるさくするなら出て行く』とか言って出て行ったぜ?」

「瀬南・・・あいつ・・・あとできつくいっとかないとね」

「そうか・・・。全員いるのだな。」

陽月は少し微笑み、そう言った。
絆はそれに微笑み返し頷く。

「うん。みんな、ちゃんといるよ。」

「ええ。あ、でも御一人まだ・・・」

そのとき、廊下のほうからバタバタとうるさい足音が響き、ガランとドアが勢いよく開かれた。

「すまん!夢の中で定例会議をしていたら遅れた!!」

学園内で最も教師らしくない炎精組担任 潮田 大 だ。
爽は担任らしきこの人物が入ってきたのに気づくと、さっさと1番後ろの絆が元座っていた席の隣に着席し、
早速寝始めた。そしてすぐに寝息を立て始める。

絆はそんな様子の爽を少し寂しそうに、苦笑いで見ていた。
そしてすぐに思い出したように潮田のほうを向いた。

「お久しぶりです。」

「おお、絆と陽月か!四日前の夢が正夢になったな。」

「ああ・・・うっちゃんがお昼食べ終わった後によーやく起きたあのときの夢か・・・」

みちるが呆れ気味に潮田改めうっちゃんにため息をついた。
うっちゃんは、はははと笑う。

「あの時はいい夢だったからな。思わず四度寝してしまった」

「そんなにぐーたらしてんのによく今回の学校改革でクビにならなかったわね・・・」

「学校改革・・・ああ!」

うっちゃんは何かを思い出したらしく、教卓をバンッと叩いた。

「そういえば一週間前に職員会議で言っていたことをおもいだしたぞ!
お前ら良くきけ!! 明日 身体測定をとり行う!!!」

いきなりの発言に一同一瞬言葉を失ったが、みちる、明雄、麗の3人が声を上げた

「「「早く言えよ!!!」」」

絆は苦笑いを浮かべる。

「(やっぱり・・・負けなのかな・・・。)」

眠っていたと思われていた爽は薄っすらと目を開け様子を見ていた。

「(・・・あれが・・・教師・・・?まあ、どうでもいいか・・・。)」

そしてまた眠りの世界に入った。



だが、いきなり明日と宣告された身体測定で大変なことが起きるなど誰も予想はしていなかった。

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