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真心文庫
男同士の友情
紅の宮殿 炎精組前


絆と爽は炎精組の教室の前に立っていた。
絆はどこか緊張した様子で扉の前に立ちすくむ。

爽はそんな絆に気づき、優しく絆の頭を撫でた。
絆は爽を見上げる。

「さっさと入れよ。好きなんだろ?ここが。お前の信頼できる、仲間がいんだろ?だったら、さっさと入って元気な姿の1つや2つ、見せたらどうなんだ?
んな表情してたら気まずくなんだろうが。」

絆は爽を見上げたまま目を見開いていた。
爽はそんな絆に爽やかな笑顔を向ける。
絆は元気が出た様子で元気に頷き、明るい太陽のような笑顔を見せた。

「うんっ!!」

絆は炎精組の扉に手をかけ、思いっきり開けた。


ーーー

「絆ちゃん!?」

入ってきて数秒後、みちるの明るい声が教室中に響いた。
そして笑顔で絆に駆け寄る。それに続いて麗も立ち上がる。
奏も嬉しそうに微笑んでいる。

「帰って来たの!?おかえりー!!」

「ただいまっ!!」

絆は満面の笑顔のまま、その言葉に応えた。
みちるも本当に嬉しそうな笑顔を浮かべている。
4ヶ月も会っていなかった人物がこうしてまた顔を出してくれたのだ。喜ばないはずが無い。

「絆、元気そうね!でも陽月はいないのね?」

「あははっ、陽月ちゃんなら今頃会長さんとお話中だと思うよ。あとで来ると思う。」

「つまり陽月ちゃんもいるってことだよねっ!わーほんとうれしい!!」

大はしゃぎの女性陣に対し、男性陣は今のところ一歩も自分のいる場所を離れていない。

「・・・よかった、これ以上女が増えたらしばき倒すところだった」

瀬南の目は、絆の後ろにいる少年のほうに注がれている。
もちろん、瀬南の横にある机に腰掛けている明雄の視線も同じ方向へと流れている。

「へぇ・・・面白そうなのが一人増えてるじゃねぇか。くくく」

「・・・うるさいのはやめろよ」

「うっせーな、俺の勝手だろうが」

「・・・じゃあ出て行く」

瀬南はそう言うと、挨拶もしていないくせに反対側のドアからさっさと出て行った。
挨拶のひとつぐらいしていったらどうなんだという話だが、瀬南はそれよりもこの空間から出るほうが重要なようだ。

爽は反対側のドアが開き、1人出て行く後姿を少しの間見ていた。
だがすぐにもう1つの視線のほうへ目を向ける。
いつも眠そうな爽だが、さっき絆に殴られたこともあって今は起きている。
そのため、その視線を向けてくる少年に同じような視線を返した。
そして、直感した。

 こいつがバトルの相手だ

と。

明雄はニヤリと笑いながら、机から降り 少年のほうに向かって歩き出す。
ひたすら鋭い眼光を彼に注ぎながら。
そしてきゃいきゃい言っている女性陣を掻き分け、少年の前に立ち止まった。
そして少年の目の高さが自分より若干高いことに小さく舌打ちをする。

「いい目ェしてんじゃねえか・・・。名前きかせな」

少年は小さく笑い、言い返す。

「名前訊きてーなら自分から言え。俺は名乗ってこない相手と張り合う気、ねーし。」

「言ってくれるじゃねぇか。・・・明雄だ。」

「醐大 爽。お前が白夜とバトルしたやつか。話しは聞いてる。」

「聞いてんなら次に俺がお前に言うことも分かってるよな?くくく」

爽は笑い、言った。

「試験もかねて、バトルしてもらう。」

「上等だ。上がれよ」

明雄は笑いながら教室の後ろにあるバトル競技場を指差した。
爽は絆の肩に手をかけ、押しのけてから教室の中に入った。

「爽くん・・・?」

絆は爽の後姿を見守った。

「さっさと終わらせて、俺は寝る。」

爽はそう言うと競技場の上に上がった。
明雄も爽とは反対側に立ち、ボールを出す。

「さっさと終わらせる・・・ねぇ。大した自信じゃねえか野郎・・・」

「勝とうが負けようが、俺ははやく寝てぇんだよ・・・ここ数日ろくに睡眠取ってねぇし・・・」

絆はそういう爽を見て、苦笑いを浮かべる。

「(うん・・・10時間寝てれば十分だよ・・・;)」

心の中で思っていても口には出せなかった。


爽はボールを取り出し言った。

「1匹戦でいいか?」

「おう。そんなにおねんねしたいならとっとと倒してやるよ・・・。フライゴン!!」

明雄が投げたボールから出てきたのはフライゴンだ。トレーナーに似たのか、眼光は鋭い。

「行け、ロイド。」

爽が投げたボールからはボスゴドラのロイド。

「こねぇならこっちからやんぞ!フライゴン、竜の舞!」

フライゴンはいきなり攻撃には入らずに、まずは攻撃力を上げ始める。
爽は攻撃力を上げ始めたフライゴンが次に技を入れてくる前にロイドに鉄壁を使わせる。

「ロイド、鉄壁!」

ロイドは鉄壁で防御力を2段階上げた。
それに対し、竜の舞で上がったのは攻撃とスピードが一段階ずつ。
だが、攻撃に速さを加えれば威力はかなりのものとなる。
明雄は強固なロイドに屈することなく指示を出す。

「逆鱗!」

竜の気をまとったフライゴンは渾身の力でボスゴドラに体をぶつける。
ロイドはもとから頑丈な上、さらに鉄壁で防御力を上げている。
そう簡単に倒れるロイドではない。

「守る!」

さらに念のため守るを使う。
そんな完璧な防御体勢のロイドに敵う筈も無く、フライゴンは少しの傷しか与えることが出来なかった。
だが、逆鱗は使ったら最後、混乱状態に陥るまで他の技を使うことが出来ない。
フライゴンは逆鱗の体勢のままだ。

「今度はこっちからいかせてもらう!ロイド、アイアンテール!」

ロイドはフライゴンに向かい、アイアンテールを喰らわせた。
フライゴンは逆鱗で対抗しようとしたが、もともと相性が良くない。
競り負けたフライゴンは混乱状態にもなってしまい、フラフラしている。

「フライゴン!キーの実食え!」

フライゴンはフラフラした状態の中、何とか聞き取った明雄の声に頷き
持っていたキーの実を口に入れた。

そしてすっきりした状態になる。混乱からは抜けたようだ。

「やってくれたなテメェ・・・、フライゴン!火炎放射!」

フライゴンは今までのお返しとばかりに口から豪火をはきだす。
ロイドはまともに火炎放射を喰らったが、岩タイプでもあるため差ほど効果はなかった。
だが、やはり少し辛そうだ。

「ロイド、お前は大丈夫だ!いける!メタルバースト!」

ロイドは頷き、フライゴンに再び向かい、メタルバーストを放った。
だが、先ほど竜の舞でスピードも同時に上げていたため、フライゴンは逃げた。
だが、ダメージも負っていたため少しスピードが遅く 傷を少々喰らったが。

再び、フライゴンとロイドは向かい合った。

互いに緊張感を漂わせている。

トレーナー同士も鋭い眼光がぶつかり合う。

「へー・・・そろそろお互い同じくらいってとこだな・・・」

爽は笑いながらそう言った。
そんな爽に対し、明雄も笑いを見せる。

「みたいだな、じゃあ次の一撃で終わらせようじゃねえか」

「んじゃ、いきますか・・・」

互いに集中し、最後の技を叫んだ。


「「すてみタックル!!」」


同時に叫んだ同じ技がぶつかり合った。


そして激しい爆音が炎精全体に響いた


ーーー


「は、はは、ははははっ!!」

「くっははははははは!!」

先ほどの爆音に負けないぐらい、二人は大声で、そしてとても清々しく笑う。
爽はしばらくして笑い止むとまだ少し笑いが醒めないながらも言った。

「はははっ、まさか同じ技でしかも引き分けとはな、はっははは。」

「だな、ははははっ!!やっべぇ、腹痛い、はははっ!!」

「んじゃ、改めてよろしく、明雄。」

爽は明雄に近づき、手を差し伸べた。
そこには引き分けだったのにも関わらず、爽やかな笑顔があった。
明雄も満足した笑いで、がっしりと爽の手を握った。

「おう、よろしくな爽。」

爽はそれを聞いたあと、何かが切れたようにバタンとその場に倒れ、寝息を立て始めた。



しばらく、休ませて上げてください。

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あきゅろす。
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