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trip
5話


名前が座ったところで、ツナは気付いたように言った。



「あ、俺は沢田綱吉!

 苗字名前ちゃん…だよね?よろしく!」



「はい、よろしくお願いします。

 えっと…」



名前はおずおずと山本に目を向ける。



「俺は山本武!これからよろしくなー!

 んで、こっちは獄寺な!」



「勝手に紹介してんじゃねぇ!この野球バカ!!

 ……獄寺隼人。よろしく」



「よろしくお願いします。」



くそ、こんな奴10代目のご命令さえなければ…と獄寺はぼやく。

名前は獄寺の様子に苦笑しながらも2人に返す。



「それにしては、随分急な転入だったね」



「あはは、父の仕事柄、良くあることなんです。」



「へ〜、苗字さんのお父さん、何の仕事してるの?」



「ええと、なんか色々掘ってるんです」



「へ、へー…」



凄いアバウトだな!!とツナは心の中でツッコむ。

そんな2人の会話を聞きながら、山本は名前に尋ねる。



「そーいやさ、苗字って、いっつもそんな喋り方なの?」



「へ、」



「いや、それならそれでいいんだけどさ!

 なーんか気になっちまってな!ごめんな、気にすんな!」



そう言って山本はニカッと笑う。

だが、怪訝な顔をしながら獄寺は言う。



「確かにな…。野球バカの意見に賛成するのは癪だが…

 他人行儀過ぎんだよ、なんか企んでんじゃねぇのか?」



「ご、獄寺君!」



何故そんな曲解なことを!とツナは焦りながらも今にも暴れだしそうな獄寺を止め
る。

そんな2人の様子に名前は焦っていた。

(ああああああああ間違えたああああいつもの癖でえええええええええええええ)

名前の心の中は大混乱である。



「あー…、私、人見知りなん、だよ。

 緊張してついつい敬語になっ、ちゃうんだあ」



ははは、と名前は乾いた笑いをする。うんうん、これで大丈夫!

そうなんだ、と納得のいった表情にツナと山本はなる。獄寺は微妙な顔をしている
が。



「そ、そんなに緊張しなくていいよ!クラスメイトなんだし!

 あ、俺のことはツナって呼んで!俺も名前ちゃんって呼んでも、いいかな
…?」



「は、…うん、いいよ、ツナ君。

 改めまして、よろしくね!」



「…まあ、10代目がそう仰るのなら…」



「ははは!よろしくなー!」



ああ、なんていい人たちなんだ、心が痛い…

名前は罪責感に苛まれながらも昼食を1口放った。









昼食も食べ終わり、4人で談笑していると、予鈴のチャイムが耳に届いた。



「いっけね、もうこんな時間か」



「ヤバい、次の英語の授業、俺当てられるかも…」



「大丈夫ですよ、10代目!しっかりフォローいれますから!」



そう3人はおもむろに立つと、屋上の扉へ歩いていく。



「あれ?名前ちゃん、どうしたの?行かないの?」



振り返り、ツナはきょとんとした顔で名前を見る。



「あ、先に行ってて!

 私やらないといけないことがあるから!」



「そうなんだ…?じゃあ、先に行ってるね…?」



納得のいかない様子のツナに、名前はにやにやしながら言う。



「予習しとかないと、当てられたときに、好きな女の子に笑われちゃうよ〜?」



「んな``っ!」



「はははっ!確かにな!」



名前の言葉に、ツナは顔を真っ赤にさせる。

そんなツナの反応に、名前はさらに追撃する。



「おやおや?もしかして、本当に好きな子がいるのかな〜?」



「そうなんですか!?10代目!」



「ち、違うよ!〜〜〜ッ!もう行くね!!」



そういいながら、ツナは屋上を後にした。後から獄寺が、待ってくださいよ10代目
〜!と叫びながら

ツナを追いかける。はははっ!なんかおもしれーな〜!と笑いながらも山本もこの場
をあとにした。

3人が出ていくのを笑いながら名前は見る。

……あれが、次期ボンゴレボス候補。そしてその部下。



「とても良いファミリーですね、リボーンさん?」



「……流石にばれてたか」



ふっ、と笑い、リボーンは名前の隣に座る。

2人の間にはこの場を懐かしむような、そんな雰囲気が漂っていた。



「んで、なんでお前がここにいるんだ?」



「護衛ですよ。親方様の命令で。」



そう、名前の目的は次期ボンゴレボス候補である沢田綱吉の護衛である。



「……まだ確証は出来ませんが、沢田さんの命を狙う輩がいるとの情報が入りまして
ね。

 親方様のご命令により、護衛の任務を承りました」



「…お前が出てくるほど、厄介な奴なのか」



「どうでしょうね。確証もありませんし。…まあなんにせよ、暫くこちらでお世話に
なりますね。」



「ああ、だが………」



そう言いつつ、リボーンは鋭い目で名前を見据える。先ほどまでの雰囲気は一
変し、冷たい空気

が2人を包む。



「ツナの成長の邪魔はすんなよ。

俺はあいつを立派なボスにする目的がある。」



「はは、分かってますよ。親方様にも念を押されました。

 あくまで、沢田さんの護衛、…補佐だと。」



「そうか、ならいいんだ。」



再び穏やかな空気が包む。

そんな空気を邪魔するかのように、昼休憩が終えたことを告げるチャイムが鳴り響い
た。



「あ。」



「…遅刻じゃねーか」



名前は慌てて走った。リボーンに会釈をしながら。

ったく…と彼は呆れながらもその後ろ姿を見送った。









そんな2人の様子を、応接室から眺める男がいた。







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あきゅろす。
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