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なくしたくないもの


「1週間だ!」


近距離で怒鳴られたため、少年は耳を押さえてしかめっ面をしている。それでも青年は止まらない。


「お前、俺が寝た後にまで力使ったこと何回もあるだろ!しかもそのまま寝ないで素知らぬ顔して旅に出ようとするし!ふざけんな!人間と違って寝なくても平気だろうが力使ってんだからてめぇーはちゃんと寝ろ!せめて夜ぐらいはゆっくりと休め!いや、むしろ移動中も俺に負ぶさって寝てろ!」


青年はそこまで言うと息が荒れたのか、肩で息をする。
そして、いつの間に手が外れていたのか、少年は青年から少し離れ、背中を向けて空を見上げている。綺麗な青い空を。

青年の息が整ったのか、その場には風の吹く音しか無い。



そんな沈黙を破ったのは青年だった。


「俺は・・・お前が死ぬのは、嫌だ」


さっき、捲くしたてていた声とは違い、悲しみの籠もった声だった。
少年は少し驚いた顔をして顔だけで青年の方を見ている。


「お前が死んだら、俺は・・・俺は永遠に等しい時を1人で生きないといけないんだ。・・・・・・そんなのは・・・そんなのは絶対に・・・嫌だからな」


さっきまで少年の保護者のようだった青年が、今は親に置いてかれそうな子供のように見える。
そんな青年を見た少年はまた前を向いた。その顔は微笑んでいた。


「ボクは死ぬ気はないよ。それにボクは、君を拾った時から君の行く道を最後まで見届けるとも決めたんだからね。だから死なないよ」

「!なら・・」

「でも、自然を戻すということは止めないよ」


そう言うと、今度は体ごと青年の方を向いた。
その顔は笑っていたが、目は揺るぎない意志が籠もっていた。

青年はその目で見られ怯んだが、何とか疑問を口に出せた。


「それは、遠回しに人間を助けたいと言ってるのか?」


少年はそれに答えず苦笑を浮かべた。
それを肯定にとった青年は手を力強く握り締めた。



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あきゅろす。
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